北八ケ岳’14.2.2~4 曇強風、晴、曇

初  日  北八ケ岳ロープウエイ・・北横岳(南峰、北峰)・・坪庭・・縞枯山荘(泊) 
二日目 山荘・・雨池峠・・縞枯山・・茶臼山・・麦草峠・・丸山・・高見石・・白駒池・・青苔荘(泊) 
三日目 山荘・・麦草峠・・大石峠・・出逢いの辻・・五辻・・北八ケ岳ロープウエイ 

 北八でスノーシュートレッキング遊びを楽しみました。初日の予報が外れて強烈な風による寒さに、またまた直前に引いていた風邪がぶり返してしまうほどでした。もちろん南も北峰も展望0で、とっとと降りて小屋へ一直線で逃げ降りました。


北横岳北峰山頂 2480m

 縞枯山荘もこの悪天候と日曜日ということでしょうか、ガラガラの9人しかお客様はありませんでした。八ケ岳といえばやっぱり南八が人気のようで北八はど~んと入山者は減るようですが、ま、ツアー客等に出会わない限り土日を避ければ、冬場は南も北もそう混雑はないとは思われます。
 しかし、この時期の夜ともなれば満点の星が降るようで、期待していたとうりのなんとも素晴らしきかな極寒の雪原における一軒家でした。でも、でも、この小屋へ入るまでの北横での寒さに体が驚かされてしまい、体調思わしくない我が身、外へ出る元気もなくなっていたためにすぐに炬燵へ逆戻りするハメになってしまい、さっぱりの初日でした。

 この時期の星空はなんといってもオリオン座を巡る冬のダイヤモンドと呼ばれる1等星たちの星空がきれいに見ることができました。体調思わしくなく堪能できなかったのが返す返すも残念でした。せめても、その星空について少しばかり思い出しておきましょう。これらが冬の星座探しの手がかりとなるでしょうか。

1、冬のダイヤモンド(冬の大六角とも呼ばれています。)

オリオン座の右上から ①アルデバラン(おうし座) ②カペラ(ぎょしゃ座) ③ボルックス(ふたご座) ④プロキオン(こいぬ座) ⑤シリウス(おおいぬ座) 最後にオリオン座の中で目立つ三ツ星の右下に青白く輝く⑥リゲル(オリオン座)の6座です。

2、冬の大三角 (冬時にはこの正三角形が大変よく目立ちます。)

 前1の中の星とダブルものもありますが、冬の大三角はオリオン座の中で左上にルビーのように赤っぽく輝く①ペテルギウスと、左真横のこいぬ座の②プロキン、さらに下方のおおいぬ座の③シリウスです。以上星空の写真も撮る余裕なく小屋へ飛んで入ってしまいました。


 さて、明けて二日目ですが、前夜からの体調が思わしくなく、悪いけれどここで本日は停滞しようと思っていたところ、運悪く今日は小屋が休業とのことです。そんなわけで仕方ありません、風邪薬をもらったり、持参のアミノバイタルを飲むなどして、やむなく前進でした。ところが歩くにしたがって体調がなんとか戻ってきました。これには助かりました。

 二日目が予報どうりの晴のお天気となって寒さもきつくなく、体調回復で元気が出てきます。この山域はスノーシューなどのトレッキングで人気なところですから、すべてトレースはばっちりでラッセルの必要もまったくなかったのも助けられました。


二日目朝の縞枯山荘

 ところが、雪景色といえるほど積雪は多くはなかったと思います。オオシラビソ、シラビソにトウヒやコメツガなどの亜高山帯で混生し、多雪期にはあのモンスターにも見えて大人気な雪景色も期待してたのですが、これはまったくの期待外れとなってしまいました。

 しかし、縞枯山に茶臼山の展望台からの真近な南八の面々は元より、南アに中ア、そして遠くに北アルプスの名峰達がなんとか頭を見せてくれたのでした。この眺望を目にすればどんなに体調思わしくなくても忘れて没頭してしまいます。これぞ雪山の魅力なのでしょう。

         
 縞枯山展望台から茶臼山の左奥に南八ケ岳    縞枯山展望台から中央アルプス    茶臼山展望台からの北アルプス

 縞枯山といえばオオシラビソやシラビソの混生する亜高山帯上部でシラビソ主体の森林が帯状に枯れることがあり、この縞枯れ現象の発生する独特な現象が見られる本家の山であります。ではその『縞枯れ現象』なる山の自然学についてもふれてみましょう。
 この縞枯れ現象の不思議はこれまでから学者によりいろいろと研究されてきて諸説あるようですが、まだはっきりとした原因究明がなされていないようです。これまでの見解は小泉武栄著の「山の自然学」によりますと、次のようなこと(抜粋)がいわれています。

     
 中木場から見る茶臼山の縞枯現象    縞枯山山頂先の縞枯れ現象の中
 

 八ケ岳で特に顕著な縞枯れ現象の山は縞枯山を筆頭に蓼科山、北横岳、茶臼山など北八ケ岳には多数発生しているようです。これらは斜面下の樹木が枯れると、その上部の森林に日光が入るようになり、風も入るから土壌が乾燥し、樹木が枯れます。その影響でさらに上の森林に波及し帯が上昇するようです。
 白骨化した下には幼木がすでに多数育っており、それが成長してふたたび緑の森に戻っていくようです。調査によれば縞枯れの上昇する速さは平均して年に1.7mだそうです。ではなぜ起きるのかですが、主に南斜面で出現し、南からの台風などの強風が原因ではないかとの説があるようです。
 さらにどうやら発生している山地はいずれも針葉樹林の林床に岩がゴロゴロする、いわゆる岩塊斜面になっているのが共通しているようです。おそらく岩塊地で土壌に乏しいという条件が、縞枯れを発生させる素因になっているのだろうと小泉教授が発表されています。

 もちろん、私の最高の楽しみは積雪の中の深閑とした針葉樹林の観察も心安らかにしてくれるひとつの流れでもあります。そう高い標高でもないのですが、それでも2000m越えの峰々を登ったり降りたりするのですから、それはなんともいえません。
 今回の山域ではそんなに珍しい樹種があるわけではないのですが、でも低山歩きが多いわが身にはやっぱり新鮮に観察ができます。山登りの中でカバノキ科のダケカンバやマツ科のカラマツはよく知られているのですが、とりわけシラビソ、オオシラビソにトウヒとくればエ~、どう違うの・・?、というような声をよく耳にします。これらマツ科の樹種は酷似するものが多く、加えて花そのものも高い木の上で咲くために、一般的には目にする機会が多くないために、どうしても敬遠されがちのようです。
 ましてや低山帯はもちろん、関西圏などでは大台ケ原や大峰山脈方面でないと出会うことも少ないために、どうしても縁遠い植物になってしまいがちでしょう。そのようなことから今一度、今回出会ったオオシラビソ、シラビソ等の話しをしてみましょう。

 それぞれのポイントを表形式に比較してみます。いわゆる同定ポインドなるものを詳しくいえばいくらでもあるくらいですが、山歩きする人たちに可能な程度の主たるもののみの比較を極々簡単にしてみましょう。

 属 種名   葉の長さ  葉のつき方等の特徴  松ぼっくりの大きさ、形
モミ オオシラビソ  1~2cmと短め 枝にはりつくように生えるため枝が見えにくい  10cmと大き目、楕円形
モミ  シラビソ  2~2.5cmと長め  葉が立ち上がっているのですきまから枝が見える  5~6cmと小さ目、楕円形 
ツガ コメツガ  1~2cmと短め  低山のツガの葉は直角に曲がるがこちらは曲がらない  1.5~2.5cm楕円形から球形
トウヒ  トウヒ 7~15mmと短い 葉が扁平、北海道のエゾマツの変種で中部と紀伊半島分布  3~6cmの円柱形 

 画像でもその様子をご覧ください。

     
 オオシラビソ   シラビソ 
     
コメツガ     トウヒ

 縞枯山に茶臼山での大展望を楽しんだ後には、植物観察を楽しみながら大石峠からR299も雪で閉鎖されていますが、その国道沿いにある麦草峠のヒュッテでお昼休憩をさせていただきました。そして次ぎは丸山目がけて急登を進みます。それから高見石の岩塊へ上がってここからも白駒池などの展望を楽しみます。今日はその湖畔の宿の青苔荘が楽しみです。
 この山小屋は我らが貸切でしたが、そればかりでなく奥様お手製の実においしい、すばらしい小屋であったのには大満足でした。私はこの舌鼓でまた泊まりたい山小屋の一番手になったのはいうまでもありません。ぜひ皆さまもお泊りなさってみてください。。私は無雪期の新緑のころにでも是非再訪し、再度美味なる手料理を賞味させていただきたいと思っています。もちろん同行の方々も同じお考えの声が出ていたのでした。


二日目到着時の青苔山荘

 



 三日目は当初予報では雪が降り寒くなるでしょうとのことだったのですが、曇り空とはいえ、苦手な寒さはそうでもなく、白駒の奥庭を経由して麦草峠、そして大石峠から今度は出逢いの辻、五辻を歩いてロープウエイを目指しましょう。


三日目麦草ヒュッテ上あたりで

 火曜日ということもあって人もほとんど会わずに深雪のトレースを進みます。五辻より半時間ほど歩くと9時半ころでしたが、遠くに動くものがかすかに見えました。どうやらカモシカかもと静かに前進するとこちらに気のついたカモシカ君が駆け足で近づいてきます。
 食べものはやらないようにしようねと口を合わせて待ちます。そうですね2~3mほどまで近づいて止まりました。みんなで一斉にカメラタイムです。どうやら、雪を掘ってササの葉を食べていたようです。こんなに厳しい自然現象の中でよくも生きられるものだと感心しました。なお、皆さまも野生動物にもし遭遇した時には食べ物は絶対にやらないようにお願いしたいものです。これは生態系を損なう原因になるからといわれています。(画像クリックで拡大)

 なお、カモシカは日本固有種で、その生息状況ですが本州、四国、九州に分布するといわれています。ただ、中国地方では絶滅し、四国、九州では限られた地域しか生息していないようです。そしてカモシカの生息密度は㎢あたり2~3頭で10頭を越えることはないようです。傾向としては徹底した保護策などのお蔭で近年分布域が拡大しているとの説もあるようです。

 
 この後にある森林浴展望台からの眺望も楽しみにしていたのですが、今日のお天気ではあきらめもつきます。CCコースの穏やかなシュー遊びもいよいよ終わりです。大きな北八ケ岳のロープウエイも貸切で下山でした。
 この後は「小斉の湯」でほっこりとさせていただき、せっかく信州に来たのだからと信州そばのお昼はこの先の「蓼科高原みつ蔵」でした。いや、やっぱり山小屋とは違いますね。その美味しさといったら、実に美味でした。

 ご参加の皆さまお疲れ様でした。大変お世話になりありがとうございました。またよろしく願います。

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