比良 荒川峠から烏谷山 ’14.2.7 晴のち曇り

 JR志賀・・中谷出合下・・水場・・荒川峠・・烏谷山・・荒川峠下道標・・JR志賀駅

 比良の中でも位置的に人の少ない烏谷山(1076.7m)へ登ろうと好天予報をみて荒川峠から登ります。こちらの登山口までJR志賀駅(7:30)から1時間はかかるのが痛いです。でも舗装路も雪の中ですから無雪期よりましでしょう。登山口の中谷出合下までは林道歩きとなりますが、これよりようやくいよいよ山道です。ここでスノーシュー装着でした。

 20分先の大岩谷分岐から10分で大きな岩の下から流れ出る水場到着で一息いれましょう。ここまでは雑木林の中でしたが、この後すぐから杉の植林帯に突入です。しっかりと仕事道がうまく谷筋を利用してつけられているようで、ほとんど不鮮明なところはありません。

         
 湯島神社の柱地より烏谷山を見上げ    登山口の中谷出合下   大岩下からの湧水は元気よし! 

 しかし、標高800mを過ぎるようになってくればまた自然林に変わります。そうなれば雪も次第に深くなって植林帯の中あたりは雪も膝くらいでしたが、上部の自然林に変わってからは次第に深雪がラッセルとなります。そして吹き溜まりでは股下まで潜ったり、シューを引き上げたりで、さすがに時間を要します。

 もちろん、いろいろ写真を撮りながらの歩きのために、どうしても亀さんです。それでなくともこのところの4日からの立春寒波でサラサラのパウダーがすばらしい雪景色を広げています。ミズナラの9本兄弟がくれば峠下の道標は目の前と知っています。

         
 雪煙の中前進しよう・・   細いがミズナラの9本兄弟は目立つ   峠下の道標、左奥打見山に蓬莱山 

 奥には蓬莱山も樹林越しに見えています。さすがにここまでほとんど樹林間を歩き通うしでしたから、遠望が利けば気分的にホッとします。登りは荒川峠経由としましょう。北西のピークをトラバースして峠へ向かいましょう。

     
 ミズナラに身を寄せるようにシャクナゲが    登りは荒川峠経由

 シャクナゲがちらほら雪の中から枝を見せています。やっぱり『比良のシャクナゲ』が頭の中をよぎります。昨年既読の井上靖の『比良のシャクナゲ』です。ちょっとそのさわりにでもふれてみましょう。井上靖は詩集『北国』の後書きに、小説家としてデビューする前の約20年間、50篇の詩を生み出したと語っています。それが次の語りでしょう。

比良のシャクナゲ  井上  靖

  むかし「写真画報」という雑誌で比良のシャクナゲの写真をみたことがある。そこははるか眼下に鏡のような湖面の一部が望まれる比良山系の頂きで、
あの香り高く白い高山植物の群落が、その急峻な斜面を美しくおおっていた。その写真を見た時、私はいつか自分が、人の世の生活の疲労と悲しみを
リュックいっぱいに詰め、まなかいに立つ比良の稜線を仰ぎながら、湖畔の小さい軽便鉄道にゆられ、この美しい山巓の一角に辿りつく日があるであろ
うことを、ひそかに心に期して疑わなかった。絶望と孤独の日、必ずや自分はこの山に登るであろうと  
 それからおそらく十年になるだろうが、私はいまだに比良のシャクナゲを知らない。忘れていたわけではない。年々歳々、その高い峯の白い花を瞼に
描く機会は私に多くなっている。ただあの比良の峯の頂き、香り高い花の群落のもとで、星に顔を向けて眠る己が睡りを想うと、その時の自分の姿の持
つ、幸とか不幸とかに無縁な、ひたすらなる悲しみのようなものに触れると、なぜか、下界のいかなる絶望も、いかなる孤独も、なお猥雑なくだらぬものに
思えてくるのであった。

  

 滋賀県の観光協会によりますと「シャクナゲは、滋賀県の花に指定されています。比良山系にはいたるところに群生しており、簡単に見ることができます。比良にあるシャクナゲは、井上靖の『比良のシャクナゲ』などで代表されるように、詩や小説などに数多くとり上げられている美しい花で、登山者にも愛されてきました。」とあります。

 比良山系で特にシャクナゲの多いのはやっぱり堂満岳の山頂一帯でしょうか。例年はこの『比良のシャクナゲ』を求めて5月上旬がハイシーズンといわれていることから、是非狙って見たいものです。もちろん、その時も五月蠅過ぎる正面谷などでなく、静かな荒川峠から堂満への道々の『比良のシャクナゲ』鑑賞登山としましょう。

 さて、荒川峠の道標からはどっさりの新雪が樹林下に続き、ひとりラッセルを楽しみましょう。峠より10分も進めば縦走路レスキューポイント14の札がかかっています。このあたりからの眼前には男性的な雪庇を従えてピークがいくつか見え、奥には目指す烏谷山が早くおいでよ!、と呼びかけてくれています。

         
 縦走路RP14地からの烏谷山    最初の雪庇    振り返れば堂満に伊吹なども

 踏む道は縦走路どうりでなく歩きやすい緩やかな斜面を選んで進みましょう。そして雪庇箇所を慎重に琵琶湖や堂満に奥の伊吹山なども振り返りって見ながら前進です。雪原のなかにはきれいな木肌の立派なナツツバキも出会えました。

     
 影絵も心和ませ    木肌が独特なナツツバキ

 縦走路レスキューポイント15まで来て北西側には本日初めて白い武奈の頭が見せてくれました。そして疎林の中を緩やかに登れば、また、雪庇が続きその表面は見事な芸術的風紋に見入ってしまいます。東側は光り輝く琵琶湖の湖面がどこまでも続いています。

     
 見事な風紋、でも左に気をつけて・・    沖ノ島など琵琶湖も眩しい

 こうしていろいろな景色を楽しみながら目の前に烏谷山直下の印です。ここにはシロヤシオの真横へ設置の道標が雪から頭を見せているのに突き当たりました。お~烏谷山だ!、でも真上を見ればエ~、まだあれを上がるの・・・?、と思いながら泳ぐように頂へうん、うんいって最後の踏ん張りで12時半にようやく到着でした。

     
烏谷山直下のシロヤシオの横に道標     烏谷山山頂

 山頂からひとしきりの大展望を楽しみましょう。そばの堂満岳から北の武奈ケ岳、コヤマノ岳にシャクシコバノ頭も見え、もちろん北東方面奥には伊吹や金糞に横山岳の滋賀県の三羽ガラスが見せてくれます。でも、これより堂満まででも遠く見え、擂鉢山から烏谷山そして堂満岳を歩くのはちょっときついかな・・?、と弱気虫だが、いや、雪の締まる頃ならなんとかなるのでは・・と思いはつきない。
 反対の南には打見山に蓬莱山が真白く琵琶湖バレーだよと教えてくれます。

     
 左に武奈ケ岳、右に堂満岳、奥にも・・    左に打見山に右に蓬莱山さらに右には森山岳

 そうだ、お昼だと強風を避けて一段下へ大テーブルを設定です。そして担ぎ上げた美味なる鍋料理の食事にありつきましょう。すると青年ひとりが上がってきて、トレースありがとうございました。助かりました!、とデカい声で叫ぶのでした。どうやら同じコースを歩いてきたらしい。そして20分もしないでお先に!、とすぐに引き返して降りてしまったようです。

 こちらはゆっくり1時間近くも白銀の山頂を独り占め、白一色のあたりに同化したような空白の心でした。ふと我に返れば、またこれでしばらくは小説にでも没頭の時が持てるだろう。このところ伊藤整や谷崎潤一郎ものが読み半ばなどでもあり、夜寒の本らしい~な、などと思い浮かべたのを機に腰を上げます。


下山は堂満岳方向を目がけましょう

 下りは結局三人分のトレースありのためにのんきに降りましょう。下方へは遠周りの荒川峠経由でなく、峠下の道標目がけて南へ下りる予定としていたのですが、考えることは誰でも同じでしょうか、先を行く青年もそのコース取りでトレースをつけていました。これ幸いにと峠から下の道標へ直に下山でした。


峠下の道標へ直に降りる

 それもそうです、下山は楽なものです。登りで100枚近いデジだったために、もう、ラッセルも写真も仕事がありません。JRまで登りの半分ほどの2時間半くらいでした。さぁ、今後の山歩きもさらにますます単独行のすばらしさを我が真髄とするのでしょうか・・・。

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