比良 伊藤新道から打見山 '13.5.2 小雨のち曇り

 不安定な天候の中に登山靴を履いてしまったのが悔やまれました。JR堅田駅前でバスを待つ間に雨を避け庇の下へ入る始末で先行きが心配でしたが、坊村でバスを降りるとやっぱり雨具を着けて出発です。ほとんどの登山者も同じような気持ちなのか、聞こえるのは雨の話ばかりでした。中には沢登りにやってきたのにこれでは寒くてどうしようと奥くの駐車場で相談したりしてる人もいます。

 でもここまで来た以上は止むをえません。登山、その気になって歩き始めます。(9:45) 今回は久しぶりに有名な急登を持つ伊藤新道を登って汁谷から蓬莱山、そして小女郎谷を降ろうと出てきました。さて、どうなるやらとまずはワサビ大滝を目指しましょう。

 今日もお目当てはやっぱりネコノメソウ類です。最初の林道を詰めますともうヤマネコノメソウが実をつけています。そしてこちらマムシグサの仲間は開花が始まったばかりでキシダマムシグサやムロウテンナンショウが咲き初めでした。(↓画像クリックで拡大画像)

キシダマムシグサ 同左の葉 ムロウテン
ナンショウ

 そしてニッコウネコノメソウはまだ咲き、おう、まだ咲いてくれていたかと喜びます。三ノ滝を過ぎるとすぐに新道に取りつきます。伊藤新道は聞きしに勝る急登で最初から息が上がります。その上小雨もあって足元スリップも要注意で、しっかりアルバイトが続くのでした。
 道は入る人の少なさを物語るようにやや不鮮明なのですが、ワサビ谷左岸を行き、流れから離れないように歩くことです。でも半時間強歩くと右岸に渡渉しますが、これもワサビ大滝までで、左岸歩きがほとんどと思って歩けばいいでしょう。
 この渓谷の道にはキンシベボタンネコノメソウ、ボタンネコノメソウがネコノメソウやタチネコノメソウたちと一緒に随所で咲いています。汁谷まで上がらないとキンシベ・・とは巡り会えないのかなぁと思っていただけに、もうこんな近場にての再会でうれしさいっぱいでした。ただ、ここまでの道も相当山慣れた方でないと滑落など危険個所のあることも承知しておきましょう。


ニッコウネコノメソウ

キンシベボタンネコノメソウ

ボタンネコノメソウ

ネコノメソウ

タチネコノメソウ

 沢筋には渓谷を好むカエデ科チドリノキが瑞々しい新葉を広げて、よく来たねと出迎えてくれているように思えました。でもほとんどが背が高くなっており、花や葉の写真は辛いものがあります。他にも花弁の多いモミジチャルメルソウやコチャルメルソウなども咲き、それにこの時期にはよく出会うオオバタネツケバナなども咲いていましたが、ちょうど雨の中で写真は撮れずじまいでした。そして標準タイムより5分オーバーして大滝です。すぐ上には珍しくテツカエデが群生していました。あんがい山歩きなさる方にも知られていないようですから触れてみましょう。


ワサビ大滝
チドリノキ
トチノキの大木

 


テツカエデの葉

テツカエデの葉柄

テツカエデの樹皮
テツカエデの群落

 さすがに滑りやすい急登道のため慎重に写真撮りながらですから少々の遅れは仕方ありません。トチノキの古木がそばに立ち、勢いのよいワサビ大滝も何年ぶりでしょうか。しばし眺めていると一人の方がもう降りてきて、聞けば「白滝山まで上がったが雪が降ってきて手袋もないし、寒さに耐えられなくなって戻ってきた」との弁です。

 みんな家を出る時にはよいお天気だったために、装備に対する気が入っていなかったのでしょうか。でもその方の判断は結果として残念でしたでしょうが適切だったのではとはいえます。でも私ならこちらの谷降りは危険すぎます。だから白滝山にいるのであればオトワ池から夫婦の滝へ降り、牛コバに向って車の待つ坊村へ下山する方が危険性の少なそうなコース取りでベターではないかと思ったのでした。

 もちろん我が身体も寒さには閉口する程の状態でしたが、それなりの装備は怠っていませんので、気分はさらなる高みを目指します。そしてすぐに分岐に突き当たり、この両方とも道の様子が思い出せません。ここで悩みましたがここまでしっかり谷筋歩きでしたから、これからは尾根筋を行こうと左折します。
 ところがこれより滑りやすい尾根の連続です。最初はテープもありましたが、そのうちにどこでもモードとなって更なる急登をやって、大滝より45分で北側のニセピークから白滝山到着でした。さすがに写真を撮らないと早いです。
 さぁ、この後は道はしっかりしています。オトワ池から長池を往復しますが、途中には他にも水の少なくなっているカシラゴ池、スギヤ池などの看板も見えます。そしてオトワ池からニシヤ谷を夫婦の滝目指して谷歩きです。

白滝山 オトワ池 長池

 この谷にももう少しすればいろいろお花が見られるのですが、この時期この寒さではネコノメソウ類くらいで、ハシリドコロやミヤマハコベはすぼんだままで下をほとんどうつ向いています。もちろんバイケイソウはまだまだ若葉ばかりが広がって開花の夏を待っています。

 分岐のオトワ池より20分で休憩小屋のある三叉路の分岐に降り、夫婦の滝を滝見台まで降りてみましょう。いつ来てもここの水量は豪快に落としています。夫婦の滝と名のごとく2本の滝が勢いよく一直線に落差約35mで落ちており、周りも若葉で取り囲み見応えのあるすばらしい滝見物のできるところを貸切で茫然と立っていました。


夫婦の滝

ナガバノ
スミレサイシン
ナガバノ
スミレサイシンの距

 元に戻って小屋内で「牛コバから上がって来た」という先客5名の方の中に入れていただき、遅いお昼を広げました。すぐに立つ先客を見送って短い休憩でした。単独行ですから歩く中ではほとんど休むことなく先へ進み馴れています。
 するともうそのグループに追いつきます。「何か花でも咲いていますか、、」「いえ、増水で渡れないんです、どこを渡ればいいのでしょうか・」と最初の左岸から右岸へのロープつきの渡渉地で右往左往しておられます。「これくらいの増水なら靴は脱ぐ必要ないですよ、私が渡りますから足運びを見ていてください」といとも簡単に渡って見せると安心したのか「なんや渡れるやないか」と全員が恐る恐る渡渉を追える始末でした。

 うん、このメンバーなら大の大人が5人も揃ってこの程度の低山歩きにくるのだろう。でもこの後も濡れた岩場や朽ちかけている木橋などの通過が大丈夫なのだろうかと思いながら先を行くのでした。このように汁谷の木の橋は相当痛んでいるものが多くなってきていますので慎重に渡りたいものですが、橋の寿命はそうなさそうな状態となっていることも知っておきたいものです。。

 ところでバイカオウレンの咲く地ではもう可愛いく若いあの独特の果実を見せてくれていました。そりゃあ、やっぱり5月ともなればバイカオウレンは終わっているよねと納得です。ところが以前見ていたキンシベボタンネコノメソウが見当たりません。どうしたのでしょうか、標高が1000m近くなったのでまだなのでしょうか。いや、そんなことはない葉そのものが見当たりませんでした。カメラ好きな人の踏みつけなのでしょうか?

 そんなことより、自らの本日の行動予定コースをどうしようと思い出します。時は13時をはるかに回っています。う~ん、これでは時間的にはどうにかなるにしても、この汁谷の流れを見ていると蓬莱へ登って小女郎谷へ下山は増水が心配だからやっぱり止めようと一気に意気消沈でした。
 ルート変更はよくある話で、家族に置いてきた予定登山コースも変更した場合にはこちらをと、そこまで説明には怠りないので安心です。そうと決まれば本日の高みとなる打見山ですが、あの建物群には閉口ですね。そんなことからチラッと蓬莱山を見て、また来るからねと挨拶してすぐに電柱路からクロトノハゲへの道に降ります。

打見山から

 この間も無雪期に歩くのも超久しぶりでしたから新鮮さを感じながら進むと咲いていました。ホンシャクナゲです。「比良のシャクナゲ」という井上靖の小説もありますが、まだ読んだことはありませんので読んでみようと、この咲き誇るホンシャクナゲの前でふつふつとの思いが湧いてきたのでした。こんど雨降り日には図書館へ出向こう。
 そしてイワウチワに残花のバイカオウレンなども楽しんでクロトノハゲからキタダカ道を降ります。上部にはイワカガミがまだこれからでしたが、フライング気味の一輪を愛でて天狗杉でした。そしてイヌブナの鮮やかな若葉が広がっています。こんなすばらしい景色の中の森林浴を楽しみます。ブナはブナでもこちらはイヌブナです。本ブナとの違いは葉裏に落葉しても主脈に毛の残るのが、こちらイヌブナですね。

ホンシャクナゲ シロモジ イワウチワ バイカオウレン イワカガミ

 


天狗杉
古木のイヌブナ イヌブナの葉

そうこうしている間にも14時を回っているのですが、若い子連れの家族や山ガールたちが連休なのでしょうか。結構登って来られますがこんなに遅い時間に登るとは・・?と、聞けば「降りはゴンドラですから・・」と平然としたものです。昼前から登山口を歩き始めるなどとは山のマナーについては非常識との我が考えを一蹴されたも同然でした。とにかくお気を付けて! 

 山道は終わって大川の最初の大堰堤が過ぎると左折し、苔むす脇山橋を渡ってからまた二度目の堰堤です。ここは琵琶湖がきれいな眺めです。空は青空、もう登りであれだけ苦労した小雨も止んでいて眺めが素晴らしく、思わずここでひとりぼっちの残り飯で虫押さえしましょう。あ~今日も一日満足な日であったのだと心うきうきの空気が美味しい。

ウリハダカエデ葉 ウリハダカエデ花
カナクギノキ樹皮
カナクギノキ花 ヤマハンノキ オオバヤシャブシ

 それからも薄暗い林道をテクテク歩きで、木戸集落を縫いながら近道でJR志賀駅に辿り着き、振り返れば打見山のゴンドラの橋脚が傾いて見え、無事に降りたか?と慰めてくれているように見えました。それにしても長らくやっていない小女郎谷歩きはまたしても残ってしまいましたが、大好きなお花で以前ネット上のハンドルネームにしたいなとも思っていたハクウンボクの咲くころにはなんとしても歩きたいな、と思いながら電車に揺られました。

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