美山ベニバナヤマシャクヤク観察会と八ケ峰'13.6.2 曇り

 今回はまず、美山のかやぶきの里を散策し、その後は南丹市美山町で開催されたベニバナヤマシャクヤクの鑑賞会に行ってきました。もちろん、このままでは帰らず、八ケ峰のブナ林がすばらしい森林浴ハイクも楽しみました。

 まずはかやぶきの里散策です。今日の美山はさわやかな風が散歩に最適なひとときでした。古風なかやぶきの民家が立ち並び、普段の生活とは異次元の世界に迷い込んだ気分です。でも私はやっぱり気になるのは植物たちの方ばかりでした。(拡大画像は画像をクリック!)

 民家の周りを歩きまわり、次のような樹木が目に留まりました。オオコマユミとコウモリカズラです。

 

 続いて南丹市美山の内久保環境・史跡保存会の人たちが中心となって維持・保全をされているベニバナヤマシャクヤクの観察会に参加させていただきました。説明によりますとこちらの群生地には6500本の大群落となっており、それは見事な風景が繰り広げられているとのことでした。

 この種は全国的に分布がありますが個体数は極めて少なく、関西でも限られた山域でしか出会うことは叶えられません。当地の保存会の会長さんを先頭に杉林に導かれますと、やや開花から日が経っていましたが、それでもまだまだ沢山のお花がいっぱいで、多くの参加者のみなさんともどもゆったりのんびりベニバナヤマシャクヤク三昧でした。

 

 会長の説明によりますと、京都府では「絶滅のおそれのある野生生物の保全に関する条例」に基ずく「指定希少野生生物」として『絶滅寸前種』に指定され、日夜保護に努めているとのことでした。府民は元より訪れる人たちすべての方々がその認識をもって愛情を注ぎたいとの思いでした。

 さて、ボタン科のベニバナヤマシャクヤクについてもう少し深くみてみましょう。

 この仲間には誰でもよく知っている純白のヤマシャクヤクがあります。この種との相違点は花弁が紅色と白色だけの相違ではないですね。でもこちらベニバナヤマシャクヤクも紅色なのはベニバナヤマシャクヤク、白色をシロバナベニバナヤマシャクヤクと名づけられています。
 そして雌しべをささえている部分が花柱ですが、この部分が何個あるのかが話題になります。古い植物図鑑では雌しべはヤマシャクヤクが3個、ベニバナヤマシャクヤクが5個との説明があったのですが、昨今の説明ではやや幅が出てきているようです。前者の雌しべの数は2~3個、後者は4~6個あるのがふつうとなっています。今回花柱2個は撮れませんでしたが6個は見ませんでした。やはり5個が圧倒的に多かったようです。

花柱3個 4個 5個

 でも、これまた実際の花ではこのような数をはみだしている個体もしばしばありそうです。今回ここでも2,3,4,5個の花柱といろいろ見ました。たとえば私が'13.5.6に金剛山で見たヤマシャクヤクは↓画像のように4個、5個もありました。

 そして金剛山の翌日'13.5.7に京都北山の魚谷山で見たヤマシャクヤクは花柱がほとんど3個でしたが、中には2個もありました。それに雌しべの花柱の先は柱頭というのですが、ヤマシャクヤクは柱頭が少し曲がると図鑑説明があり、ベニバナヤマシャクヤクは先が強く巻き込むとの解説となっていますが、それぞれ画像をご覧いただきますと、この解説は両者とも双方の少し曲がる、強く巻き込むの様子が見られます。よって曲がりの解説は、花柱の個数とともに相違点にはならないと考えます。
 でも個数がその分布域でふつう3個と少ないのがヤマシャクヤクで、その山域でふつう5個と多いのがベニバナヤマシャクヤクだと考えられます。なお、シロバナベニバナヤマシャクヤクはヤマシャクヤクよりは開花期が遅くて、ベニバナヤマシャクヤクと同時期に咲き、一緒にまたは同じような山域に咲く白い山芍薬をシロバナベニバナヤマシャクヤクといっていいのではないでしょうか。

 最後にもうひとつの葉での同定の話題です。ヤマシャクヤクの葉裏は帯白色で、ベニバナヤマシャクヤクの葉裏は軟毛が密生すると解説にあります。これは画像ではなかなか容易ではないため、現物をルーペで見る必要がありそうです。
 残念ながら金剛山や魚谷山でのヤマシャクヤク(↓左)の葉裏を意識しルーペの観察も失念したし、撮った画像もないのですが、魚谷山の一枚にチラッと葉裏が写ったものがありましたので、今回のベニバナ・・の葉裏(↓右)と見比べてご覧ください。

  

 でもこの画像での比較はほとんど無理がありますね。今回はルーペでしっかり観察しましたが、確かにベニバナヤマシャクヤクの葉裏には軟毛がびっしり生えているのが確認できました。今後もしヤマシャクヤクの葉を見かけた時には葉裏に毛があるのか無毛なのかをルーペで観察してみることとします。

 なお、ベニバナヤマシャクヤクの群生地林床には他にカラスシキミ、マルミノヤマゴボウ、マムシグサ、オモトなどいずれも真っ赤な果実をつけ有毒なものが咲くように説明もありました。そうそうベニバナヤマシャクヤクもこれまたもちろん有毒植物ですね。そんなことから鹿も食べないのに群落地一帯には金網の柵が張り巡らしてあります。これはよからぬ人間の無断侵入による踏みつけ防止や盗掘等の防止柵なんでしょうか・・・。


 観察会を終えて、最後は五波峠より八ケ峰の森林浴散策でした。このブナ林等の自然林がずっと続く京都と福井の県境尾根は何度歩いても趣あるいい散歩道です。でも私にとって思い出の樹木花であるハクウンボクに出会えることだろうと、わくわく気分で足取り軽く峡谷を目指しました。
 二日前にそろそろハクウンボクも咲くだろうと比良の小女郎谷を詰めたのでした。でもまったく開花の気配なくて残念だったのですが、2日後の八ケ峰では・・との期待が叶いました。エゴノキの仲間だけにそっくりな白花ですが、こちらは総状に2cmほどの花を20個ほど下向きに咲かせます。やった~!、この花は優美さと気品を兼ね備え、樹木の中でもトップクラスの美しさだと表現されています。

 このハクウンボクのそばにはヤブデマリが咲き初めとなって白い花弁であたりを明るくしており、反対側にミズナラにつるんだツルデマリも咲きだし、同じ木につるんで垂れ下がっていた蔓には小さな薄黄緑色の5弁花のツルウメモドキでした。その他にもいろいろなものが咲いていましたが、山野草はほとんどなく、やっぱりこの時期では樹木主体とならざるをえませんでした。

 山野草ですが、ほとんど数はありませんでした。最後にバスの車中より五波峠から田歌への道では薄暗い山の斜面にいっぱいのミヤマヨメナが満開で見られました。また麓まで降りてくると美山川沿いにはあちこちにハクウンボクと同じ仲間のオオバアサガラ(エゴノキ科アサガラ属)が終盤のようでしたがこれも多数見られました。
 ホウノキもまだ残花が見られますが、当地はやはり福井県よりの北部のためにやっぱり寒さから遅くまで咲いているのでしょうか。さらに車道沿いにヒメウツギが満開で真っ白い花盛りでしたが、本来のウツギはまだまだ蕾状態が多かったように見受けました。

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