紀伊  雲雀山  '12.4.5

JR紀伊宮原-得生寺-雲雀山-糸我峠-施無畏寺-栖原海岸-JR湯浅

 

 和歌山なら桜も咲きだしていることだろうと南紀方面の比較的珍しい植物を求めて雲雀山を訪ねました。といっても208mでみかん畑続く可愛い丘のハイキングです。温度も上がり、なかなかの急坂続きですからしっかり汗かきながら登ります。

 そうそう、雲雀山といえば有田川を宮原で渡河し熊野古道は糸我に入るとあり、その一部コースも歩くことになります。そして中将姫ゆかりの得生寺にも立ち寄ります。こちらは時の右大臣藤原豊成の娘である中将姫が継母の怒りをかって殺されそうになったのですが、徳を重ねる姫を見かねた家臣伊藤春時にかくまわれた場所として有名な得正寺は桜が満開となっています。ここでは毎年5月14日に中将姫会式が勧修され、善男善女で大変な賑わいのようです。

 

 

 その寺の先には樹齢500年といわれる大楠の木のある糸我稲荷神社は鬱蒼とした森で、熊野詣の人たちも休まれたことでしょう。なお、糸我王子社があったようですが、現在はこの糸我稲荷神社に合祀されています。

 そして駅から堤防沿いよりずっと咲いていたセイヨウアブラナ、カンサイタンポポ、オオイヌノフグリ、カラスノエンドウなどの野の花から登山口が近づくとヤワゲフウロが可愛く咲き誇っています。そばにはカラクサケマンも大繁茂です。 


ヤワゲフウロ(フウロソウ科)

 みかん畑沿いの急登を上がるとすぐにジロボウエンゴサクが咲いていますが残念ながら最盛期は過ぎてしまっていました。でも中にはきれいに待ってくれているものもありました。


ジロボウエンゴサク(ケシ科)

 さらに登ると中将姫ゆかりの地の説明石などがいろいろと立っています。親子対面岩、宝篋印塔、行場、写経の岩、経の崫などがあります。まもなく御本廟である得生寺奥の院の雲雀山です。
 眼下に有田川、その奥には紀伊の山並みが続いており、展望抜群の山頂です。この一帯には備長炭の原料で知られるウバメガシ(ブナ科)が周りを囲んでいます。

 

 わずかに休憩した後は糸我峠へ向かいます。トベラ、イヌマキ、ヤマモモなどの照葉樹も見られ、タラノキ、モチツツジ、アケビ、ムベ、ビナンカズラ、ヤマハゼなどの落葉樹も目にします。そして独特の肌を見せてくれるカゴノキも結構見られます。

 そして桜が咲いていました。ヤマザクラは見た目ですぐに分かりますが、さてこの桜はと考えてしまいます。早速ルーペで花柱や萼の様子を覗きます。花柱の下半部に毛が多く、萼には鋸歯があるためエドヒガンです。もちろん花は葉の展開前に咲くグループです。もっともこの個体はエドヒガンの大きな特徴である萼筒がぷっくりと膨らむのですが、そう膨らんではいなかったものもありましたが・・

   

 

 糸我峠は熊野古道との四差路でもあるために、賑やかな標識があり、また最近でしょうか絵巻風の大きな看板が取り付けられていました。それにもましてイスノキ(マンサク科)という珍しい樹木のプレートが下がっていました。もちろん初見です。へ~これがマンサクの仲間なんですね。他はみな落葉樹なんですが・・ 

   

 この峠で腰を下ろしますとあたりには普段あまりみなれないヤブチョロギ(シソ科)やカラクサケマン(↓右画像)も大繁茂です。

 

 今回のコースにはみかん畑の作業用に簡易舗装路が走っていますが、この舗装路を歩くために山道は最初の急な坂だけのかんじです。さぁみかん畑の作業が進む中を軽快に歩を進めます。

 アケビ、トベラにヤマモモは蕾でしたが、ナガバタチツボスミレがあちこちに満開です。その他にはモチツツジが咲き初め、中でもハチジョウイチゴ(↓画像)が満開できれいに咲いていました。このバラ科キイチゴ属ハチジョウイチゴの特徴は花が下向きに咲くことで、棘は原則ないことです。

 

 またクサイチゴかオオバライチゴかの同定ポイントを忘れてしまっていたために現地では同定不可でしたが、調査の結果は花のつく葉は一対しかないとのことでクサイチゴと判明しました。

 春の海の長閑な湯浅湾が見え出してくると施無畏寺は近くなってきます。するとミミズバイ(ハイノキ科)の林立地でしたが、樹高があって接近して撮れませんが、花時は夏頃ですから、ま、いいでしょう。
 そしてこれまた日本海側をよく歩くものにとって比較的珍しい樹種である、タイミンタチバナ(ヤブコウジ科)が蕾を膨らませかけています。でも今回は同じヤブコウジ科のカラタチバナのこの時期には赤い実をつけたものはみつけられませんでした。

 

 さぁ、植物観察はこれくらいにしてその昔、明恵上人が白上山で修業されたのいですが、その名残りの施無畏寺本堂は春日造の様式で、一帯のお花見が見事なほどでした。もちろん湯浅湾の島々の景色も楽しみます。

 

 ちなみに明恵上人ゆかりの湯浅湾の島々の名前は鷹島、苅藻島、白崎、黒島、毛○島の5島であります。桜並木のお花見を楽しみながら舗装路を下ると栖原海岸に降り立ちます。

 この栖原海岸歩きの途中にはクスドイゲ(イイギリ科)、アコウ(クワ科)とこれぞ暖地性植物もあるのですが、今回は時期的なことから見つけることはなりませんでした。長閑な波が砂浜に打ち上げるさざ波の音を聞きながら50分ほど歩いて醤油の街として有名な湯浅へ出てJR湯浅駅がフィンでした。
 本日は12時ころから16時前の4時間弱のハイキングを楽しみ、車中ではお気に入りの文庫本をめくりながらの帰京でした。

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