富士   青木ケ原樹海   '12.4.15

 富士山麓の青木ケ原樹海等のエコツアー研修を楽しみました。しかしながら今年の寒さによって期待していた植物層豊かなはずの青木ケ原の植物たちはまだまだ春遠からじでした。

 まずはエコロジーなどについて私の所属するガイド協会の講師より次のような解説が聞けました。近年は生態学的な知見を反映しようとする文化的・社会的・経済的な思想や活動の一部または全部を指す言葉として使われるようです。
 そしてエコツーリズムですが、こちらは自然環境を主体に、環境問題に重点を置いての実施や文化・歴史等を観光の対象としながら、その持続可能性を考慮する旅行、リクリエーションのあり方がツーリズムのことであるようです。

 そもそもエコツーリズムは中南米でパナマの北隣に位置するコスタリカが発祥の地とされています。さて、そのコスタリカは1948年に軍備を廃止し、永世中立国を宣言した国であり、平和を愛し中米のスイスと称えられています。
 民主主義が浸透し、教育や環境保護に熱心で誠実・勤勉な国民性に加え、ラテン特有の陽気さを持ち合わせていますので、ツーリストにも非常に寛容な心で出迎えてくれるようです。

 さらにオセアニアのオーストラリア、ニュージーランドなどもエコツーリズムの先進国とされているようで、昨今では世界各国でこの精神は浸透しつつあるとのことでした。とはいえ、エコツアーとは簡単にいえば、自然環境の保全と住民の持続的な生活を目的とした産業の一つの分野です。携わる業種は、ガイド業、旅行業、宿泊業、飲食業そして狭義のお土産、地域物産等の生産、販売業等多岐にわたる観光業ももちろんです。

 まずこのようなエコツーリズム等について理解を深めた上で、さらにここ富士山の成り立ちについても知る必要があります。講師の話が続きます。

 このような話を聞いている最中、すぐ近くでキジの雄が、けたたましくケン・け〜んと泣いて山肌を忙しく走り回ります。でもその後の歩きのなかで野鳥たちはほとんど見ることはできませんでした。まずは富士山の歴史です。

 2000万年前

 富士山はまだ海の底でした。その後、隆起が続き陸地化しました。

数十万年前

 愛鷹山・小御岳火山が噴火しました。

約8万年前

 小御岳火山の山体を貫くようにして古富士が噴出しました。(関東ローム層の形成)

約2万年前

 古富士が激しく噴火し、約3000mの高さまで成長(最後の氷河期)。その後一時的に活動を休止しました。

約1万年前

 再度、噴火を開始し新富士を形成しました。(このころが現在の姿となった時期らしいですね。)

約3000年前

 大室山も個火山のひとつとして噴火しました。長い年月をかけて森を形成

約1100年前(西暦864年、貞観6年)

 長尾山が噴火し、青木ケ原丸尾(マルビ)を形成しました。あたりは火の海と化し大室山もその東南面を消失しました。

(以上配布資料より)

 太陽から地球が誕生したのは約46億年前といわれているのですが、それに比べると富士山の誕生はわずか約1万年前と極めて新しいのですね。。。。、さぁ、それではいよいよ青木ケ原樹海の道なき森を進みましょう。

     
 唯一の池で説明聞く、ぬたばか・    ガイドも背が高いがブナも大木

 お花が咲いていました!、思わずみなさん感激の声〜スミレ類の中でもいち早く咲くといわれるヒナスミレもまだまだ咲き初めで、目覚めたばかりのようすです。それにフイリヒナスミレも咲いています。しかしエイザンスミレはまだ蕾でした。

 
   
ヒナスミレ(右は距がぼってり太と短い、葉裏は紫色を帯びる) 
 
 
 フイリヒナスミレも咲く   エイザンスミレはまだ蕾 

 他にも白花のアオイスミレも初めて遭遇しました。

 講師のガイドによると例年であれば、この時期は例年ならキスミレもいっぱい見てもらえるのですが、今年は大幅に開花が遅れているようですとのことでした。でも今年の植物たちの開花状況なら致し方ないでしょう。最も私はこのキスミレを九州で見ており、きれいだったことをしっかり覚えていますので、ここでもう一度とはそう感じません。

 さらにキジムシロが咲き、ユキザサは蕾で、フデリンドウの芽出しもあり、そしてこれからここではベニバナヤマシャクヤクが森を華やかに飾ってくれます、これが新葉ですと説明あり、小さな暗赤色の葉っぱが巻いた状態で枯葉の間から多数見れました。
 この種は全国に分布と図鑑にはあるのですが、実際にはほとんど出会う箇所は限られているのでは?、と思っていました。しかしこれだけ新葉があるのであれば、満開時を狙って再訪したいともちろん思いましたが、さてこの青木ケ原樹海の森に一人で入り込むのは・・と心細くなるのでしたが???

 これぞ枯野続く森でした。そして育ちのよくない植林の常緑樹が少しあり、落葉広葉樹がほとんどです。コナラ、ミズナラ、ブナ、イヌブナ、イヌシデ、ウリカエデ(以上樹肌で確認)、オオヤマザクラ、カジカエデ(共に落ち葉で確認)、チドリノキ(枯れた対生の葉がぶら下がりで確認)、ホオノキ、ハリギリ(共に落ち葉で確認)、イイギリ(落ちていた果実で確認)などの樹木も観察しながら歩きます。

 そして各所に炭焼き窯跡も散在しています。昔はこのような樹海の中でも炭焼きが行われていたのですね。これだけ平坦地ですから、傾斜のきつい山岳地帯とは違って比較的楽な炭焼き作業だったことでしょう。
 それにしても昭和30年代の燃料革命はいろいろな面で大きな大改革となったのでしょうか。この炭焼き窯跡の近くにはモミノキの大木が切らずに残されていました。恐らく山仕事の目印にしていたのでしょう。

 ススキの原に出てくると直近の積雪で化粧直しの富士山が大室山の右側に迎えてくれました。そして周りをぐるりと見渡すと登った山ばかりが見えるばかりか、青木ケ原樹海の中から真っ白に冠雪した富士山が見れるなんてと大感激でした。

 それにしても今年初の富士山をようやく眺めることができました。今年も富士展望の山旅を計画しなくては・・、イヤそれまでにGWの山旅びっしりが待っているので準備も必要ですが・・・。


御坂の鬼ケ岳、十二ケ岳など

烏帽子岳、パノラマ台

毛無山、雨ケ岳、竜ケ岳

南アの北岳など白根三山

 ミズナラの木々とともに落葉の落ち葉で確認したのですが、大木のカシワの木もありました。この木は柏餅の葉に使われるため名前はよく見聞きしてはいるのですが、自然の中で出会うのは数少ない樹種でした。


モミノキ

カシワ

 青木ケ原から朝霧高原へも移動して森を歩きましたが、地形的にも植物的にも双方そう変わりはなく感じました。それにしてもどちらも溶岩台地は苔むしており、この時期の草はまったく生えてはおりません。そんな中でフンコロガシを見つけたよとの声で、どれどれ・・と正式にはセンチコガネという昆虫のようです。

 


苔むす溶岩台地

糞転がしのセンチコガネ

 このように初めての青木ケ原樹海等の自然探訪でしたが、可能なら多くの開花が見られる頃にリベンジしたいなと思いながら帰途につきました。ほんとうのところ今回は道なき道の徘徊でしたから、もう一度歩けと言われても自信がありません。そして路線バス等公共交通機関の少ない地域でもあり、今後の訪問は容易ではなさそうです。

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