京都北山 ケーブル道からの愛宕山 ’15.5.10 晴

 清滝-ケーブル道-黒門-愛宕山-三角点-大杉谷-第五ベンチ手前-大杉谷左岸-空也の滝下-清滝

 今年の花暦は例年になく早そうな感じだ。そうだ、去年5/25に終焉のオオウラジロノキの花を見ているのだったが、今年はもう咲いていないだろうかと登ってみた。それではどのルートで登ればおもしろいかとのことで、廃線ケーブルカー跡を歩いてみよう。

 この愛宕鋼索鉄道跡は昭和4年に開業され、戦況の悪化で昭和19年に廃止となったケーブルカーであった。それから70年ほどの長きにわたり、自然の中にその残骸が荒れるにまかせられ今にあるのだが、消えてなくなるのはそう遠くはなさそうな状態となっている。

 このような廃墟の残骸を今生きている我らが、目の当たりして後に残る子供達へ伝えていくためにも、せいぜい今の様子を眺め感じ取って、自然における緑の、紅葉の、雪の景色にとけ込む愛宕ケーブル駅跡等をしっかり焼き付けたいとの思いもあるのだ。

 さて、清滝の愛宕登山口の白い看板立つ金鈴橋前から取りつき、いきなり広い駅舎跡らしき雰囲気の中を歩きだすことになる。最初は表参道と寄り添いながら登る道だが、すぐに離れて表参道を歩く声も消えて、静かな山の中を登って行くコースだ。この道は歩きだしてやがて通行を止めるロープが張られており、通過はあくまで自己責任で十分注意願いたいし、勧めるものではもちろんない。

 このケーブル跡には、トンネルが6箇所あるのだが、第1、2、4、6のうち初めにある第1のトンネル出口付近がやや土砂崩れでふさがり気味だが、どうにか出られ、2、4、6トンネルは支障なく通過は可能だ。その内の第4トンネルあたりではケーブルの交差地でもあり幅広となっており、余裕で歩ける道が続いている。
 しかし、残りの二ヶ所のトンネルは迂回が必要なために注意したい。それは第3と第5トンネルがトンネル内の壁が傷み、天井の亀裂箇所より崩落ひどく土砂でふさがれてしまっており、先へは通過不可能な状態となっており、各々右側から巻き上がることになる。
 でも、第3トンネルの迂回はそんなに難しくはないだろう。右から巻けばすぐに古道の踏み跡が表れる。そして倒木が出てくればその倒木を潜って道なりに右に行かずに、すぐに左へ急登をやれば第3トンネル出口右へ上がることとなる。
 もうひとつがしんどい、その第5トンネルの迂回は右側の巻道へロープもあるほど急登がきついので注意が必要だ。なんとか周りの木々をつかんで登り上げると、毎年7/31の千日参りには表参道五合目東屋広場あたりでは、ビールやスイカ等が売られるのだが、これらの物産をジープで運ぶ、大杉谷右岸コースからのいわゆるジープ道に飛び出す。ここを左へ2分で東屋へつく場所だ。ここのジープ道を横切って直進して巻けばすぐ第5トンネル上部の出口へ行けるのだ。

       
第5トンネル手前右へ迂回   第5トンネルの迂回路急坂 ジープ道横切り直進  第5トンネル上部の出口 

 第5上部出口から第6トンネルへ進むが、第6からすぐのところが一部崩落進み、足元注意だ。それを上がればすぐで右側後方には大展望が待っている。恐らく開業当時は植林もなく、今以上なるビューポイントが売りになっていたに違いない。でも、このビューもやがて杉の成長により、範囲が狭ばまること頑なにない。


奥右に比叡山、一番左のピークは桟敷ケ岳か、中央奥薄らと比良山系も

 ところで、あたりに以前あった、まもなくこの時期に鮮やかに真っ黄色の花を咲かせるジャケツイバラの太い株が切り落とされてなくなってしまっているのが残念だ。今回はこの道に見られた花はムロウテンナンショウに小さな白花のタニギキョウくらいでさっぱりであった。
 それにしてもいつも思うのだが、植物に無関心な登山者で道整備という行為をしてやるのだとの考えの場合だと思われるが、登山道沿いに生えるもので特に葛類や倒木などを無造作にバッサリ切り倒したりする所業は問題であることも認識してもらいたい。もちろん、整備なる好意はありがたいのだが、いろいろな点に留意配慮されることも望みたいものである。

 そして、清滝から1時間半もかかって愛宕ケーブル山頂駅舎跡だ。コンクリートの建物が荒れるに任せた状態の廃墟となっている。でも今はこの建物とカエデ、クマシデ等の新緑とがとけ込んでおり、見事なまでの景色を造り出しているのだ。今後はこの駅舎跡の光景に四季毎訪ねてみようと心刻んだ。

 
'15.4.29に撮った駅正面側

 この後には愛宕遊園地跡にも回って、ミヤコツツジを探してみたが、こちらはさすがにまだ時期早しの感じで、咲くのはヤマツツジばかりとなっていた。そして愛宕神社のクリンソウだ。これがなんと満開がもう進んでいた。でもそばの中国原産の植栽ではあるが昨今では珍しいカラタチは蕾で、もう少しで開花となるようだった。昨年5/25に見た花はやや終焉となっていたし、ちょうど満開時の花に出会うのは容易ではないが、カラタチだけは一度は満開時をいつか求めたいものだ。

     
 愛宕神社のクリンソウ満開   カラタチは蕾 

 ちょっぴり寒いなと感じる12.5度の山頂神社でお参り後に昼食をすませて、三角点地まで足を伸ばそう。もちろん、オオウラジロノキの開花確認が本日のお目当てなのだ。仏炎苞先が糸のように細長く伸びるムロウマムシグサを見てジープ道へ降り、その道では多くの登山者が比叡山に比良山系の山座同定に喧しい。
 今日はやや霞んでおり、こちらのデジは反対の山際に向けよう。カメラの先は山でなく花だ。でも、ムシカリは終わり、ヒロハゴマギは前回(4/29)より少し蕾が膨らんだのかな・・?、といえるような状態で、それにコマユミも蕾膨らむであった。これらの満開時も見たいものだがその頃には他の山の予定が・・。

 地蔵辻の三叉路から杉林の踏み跡を追って三角点へ上がったが、石のすぐそばで二人が食事中であり、すぐで水場へ降りることにした。でもこの芦見谷への谷すぐもまだ花には出会えなかった。ツリバナが蕾だが、ウスギヨウラクは終焉だった。昔あったサンショウはすっかり枯れて消えてしまっていた。水場で補給し、登りかえしていよいよオオウラジロノキ(バラ科リンゴ属)だ。

 なんと、もう満開いや、厳密にいえば満開過ぎた所だろうか。花の命は短くてとつくづく思うのであった。そのオオウラジロノキの9月ころ(↓下段画像)の実の様子を含めて画像をご覧いただこう。これも同じここでの同一個体を撮ったものである。

     
枝が高く上手くは撮れない     満開のオオウラジロノキ

 

             
オオウラジロノキの果実以下13.9.23撮   一昨年果実は密集して豊作だったので今年も    爪で真っ二つに割ってみた。リンゴとそっくり   葉身14cm幅9cmにもなるとのこと

 もちろん、このオオウラジロノキの満開を見れば、昨年の同日(5/25)も満開で咲いていたウラジロノキ(バラ科アズキナジ属)も観察に回ろう。だが、しかし、ウラジロノキは上の方の枝に小さな蕾がついているだけで下の方には蕾はまったくなかったのが残念だった。調べると開花時期が5月のオオウラジロノキで、ウラジロノキの開花は5~6月とあり、ややこちらの方が遅めの開花らしい。しかたなく、大杉谷左岸ルートを降って空也の滝下に下山とした。

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