比良 細川尾根から武奈ケ岳 ’15.1.29 曇り

 JR堅田=細川バス停-細川尾根-706P-北稜-武奈ケ岳-コヤマノ岳-八雲ケ原-北比良峠-ダケ道-大山口-イン谷口-JR比良

 この日のバスにはいつもの地元生徒達の姿はなく、その代りに14名の女子山の会組に乗リ合わせた。たまたまお二人の知り合いはもちろん、他のメンバーも元気そうな顔ぶれが並んでいた。鎌倉山へ登るとのことのようだ。もっとも下山はどちらかは聞かなかったのだが、オグロ坂へ降って葛川学校前までのルートなのだろうか。これなら中村乗越から二俣までの谷筋がやや心配だが・・。

 私も相当前になるが、雪の上をアイゼン一本やりで鎌倉より峰床へ縦走し大悲山口へ下山し、最終バスまでの長時間待ちが辛く、やむなくとぼとぼと車道を歩いたのだ。もっとも今と違い、その当時は京都バス朽木行があり、江若バスより1時間ほど早く坊村を歩きだしていたので、山の中では暗くなるような行程ではなかった。そして花背山の家あたりで「乗りますか!」と、北大路までの救いの神に助けられたことがあるのを思い出しながらバスに揺られていると、バスは坊村で全員が下車したが、他に若い男性一人だけが反対の武奈ケ岳へ登るようだった。

 運転手は一人っきりの私に「終点の細川で降りてどこへ登るんですか?・・」、と怪訝そうに話しかけてきた。「細川の尾根から武奈へ登るんですヨ。」と答えると「エ~、そんなとこ歩けるんですか、聞いたことないなぁ・・、気をつけて登ってくださいよ。それでまた同じ道を細川へ降りてくるんですか?」、としつこく尋ねるので、「いや琵琶湖側のJR比良駅へ下山だ」と返事をし、こちらは歩き始める服装の準備に忙しい。

 「聞いたことないなぁ・・」そんなことはなく、このルートは山好きにはよく知られているのだ。運転手は山登りには無頓着だから、コースなど知る由もない。こちらのイメージでは運転手というのはいつ見ても休憩中には『たばこ』ばかりふかしている業種だとの思いがあるのだが・・・。

 さて、人のことはどうでもいい。自らの安全登山を心しよう。バス停(9:50)をすぐに歩き始めた。直登道を真上に見て、右折の谷沿いからのジグザグ道をつぼ足で鹿の足跡を登ろう。そして標高500の直登道との合流点あたりでようやくスノーシューの装着とした。ところが100m少し歩いて手袋を忘れたようだ、急いでシュー装着箇所まで駆け降りたのでロスタイム発生だ。(涙)

 
細川バス停付近の様子

 その後は次第に雪も増えてきたが、正月から降り始めた今年の雪で、月末のこの時期ともなればある程度雪は締まってくれている。でもその上には新雪が乗っているところも多くあって、足を取られる歩き難い状況となってきた。もちろんそれなりに一人ラッセルを強いらる箇所もあって、のんびり登ろうという気持ちが湧いてき、そうこうしているとようやくP706(11:25~35)だった。

 細川尾根で登りでも降り時でも一番心和むところだ。もちろんここで高度計の再チェックとし、行動食を腹に入れて一息いれよう。木々が落としているその影とともに、たえず私の目の前に出てくるであろう、あたりのイヌシデ゙、ミズナラ、カエデ゙などが林立しているのだ。それに今年はつるんだ枝が風だろうか、はたまた雪の重みであろうか、折れてしまった落枝とともにイワガラミが目の前に下がっているではないか。これらの樹木達を眺めながらゆっくり物思いに耽ろう。。

     
 P706で見たイワガラミ    P706から先は急登になるが・・

 そうこうしている目には、この先に見下ろしている山が飛び込んできたのだ。この後が急登であることは我が身が知っている。それにすぐで岩場が露出する地もあるのだ。さぁ、足を進めよう。750~800mあたりが地図を広げれば一番等高線が黒っぽいのだ。
 露岩のそばよりその上部にはイヌブナが多くの株別れを見せて突っ立っている。雪の急登はさすがに堪えるし、悪いことに深い新雪に足掻きが取れない。しかし、私にとってはこのような山登りは枚挙に遑あらずだから、ここにきて慌てはしない。このような苦しみは長くは続かないだろう、そろそろ古木のブナの森も近いだろうと身体に刺激を与えながら登るのだ。

     
 750mあたりは露岩があちこちに    株別れのイヌブナ

 そして間がな隙がな目に映る霧氷の景色を心行くまで有頂天になって楽しみ元気になれば、そこにはいつものブナの森であった。手前にはあたかも前座のごとくナツツバキが身を細めて遠慮がちに立っているではないか。思わず吹き出しそうになった。(笑う) このあたりの雪に埋まる自然の景色を見るための、これぞ細川尾根歩きなのだろうか。

         
どんどん雪多くなり    きれいに霧氷続き   ナツツバキの奥にはブナ古木 

 こうしてどうにか1050mあたりの大杉地に押し上げた。あたかも屋根の庇のような地でまたまた一息だ。いやぁ、霧氷のトンネルにご機嫌である。そして近くなってきた北稜がさらに楽しみになってきた。これまでの登りで喘いできたのだが、もうここまでくればあたり一面の雪景色に溜まらない。この景色に出逢いたくての武奈だったのだ。もっとも青空はほとんどなかったのが惜しまれた。もう少し予報はよかったハズなのにと曲がり形にもと気を静めるも心は微妙である。だが、北陵から釣瓶、蛇谷への樹氷はそれなりに美しかったがバックがいただけない。青空はどこだ!、そしてすぐに武奈ケ岳(13:15~25)到着だ。そこには3人の各単独青年が思い思いに景色を見やって楽しんでいるようだ。

         
 霧氷のトンネル続き    1050mあたりの大杉   北陵から北の稜線 

 

     
 北稜の霧氷    武奈ケ岳山頂(1214.4m)

 青空はなかったが、展望はどうにか見られた。伊吹山に霊仙山、御池岳などの鈴鹿の北部などは目に入れども、しかし、白山や御嶽山などまでとはいかなかった。それより、目と鼻の先のコヤマノ岳の樹氷が素晴らしく、心舞い上がらんばかりの武奈ケ岳山頂となったのだ。

     
 指呼の間のコヤマノ岳、お~素晴らしい!    西南稜も白い
     
 釈迦岳、ヤケオ山も白く    武奈を振り返ろう

 ひとしきりの眺望を楽しめば、乗ってきたバスで坊村下車の若い青年の顔があった。彼もすばらしき雪化粧の展望に大満足の様子であった。そしてそれぞれが勝手に下山開始である。こちらは予定どうり八雲が原からダケ道でJR比良駅を目指そう。

 こちらの道というより、武奈ケ岳からの坊村あるいは八雲が原などへの下山にはトレースが普通はあるために、初心者の雪遊びとなってしまう。しかたないのでコヤマノ岳まで覗いて来ようと途中にザックをデポしてコヤマノ岳の標識そばのブナの大木まで行ってみた。さすがにこちら方面は霧氷のトンネルは温度上昇により、細川尾根上部とまではいかず、やや物足りなさを感じてしまった。

     
コヤマノ岳道標地     道標そばのブナの大木

 ところが私が引き返してくれば山頂にいた青年がこちらへやってくるではないか。「金糞峠に降るの?」、と聞けば、「いいえ八雲が原に降りようとしたのですが、トレースがないのでどうししょうかな・・と思っています。」とのこと、こちらはそれを聞き「八雲へのスキー場跡には簡単に行けますよ。よければ私も降りますから・・」ということで二人して進めばすぐに踏み跡に合流となってしまったのだ。
 彼の話す言葉には「八雲への分岐の道標が見つからなかったのですが・・」ともいい、「うん、トレースは道標より上方向に進んでいたから出会わなかったヨ、もう少し下にその道標はあるんだ。それならイブルキノコバ分岐の道標は見つけたかな?、」と聞けば「それは見ませんでした。」との返事で、これはアカン・・との思いでした。
 どうやら、松の潜りようが足らぬ青年のようで、平日に単独で坊村から武奈への上下は容易だが、坊村から登って琵琶湖側へ下山時にはえてしてトレースの無い場合がままあるために、地図読みに自信なき身には心配となろうことも承知すべきであろう。

 こちらは八雲が原スキー場跡での展望でも伊吹山や釈迦岳それに先ほど立っていた武奈ケ岳の頭も振り返り見え、今日は思いのほか満足いける雪遊びが楽しめたなと間が好い気持ちとなって、湿原のほとりで一本立てて、のんびりとしよう。それにしても今日は無風で思いのほか寒くなかったのがありがたい。

     
 スキー場跡上部の霧氷   中盤にブナの大木 

 北比良峠でも琵琶湖に広がる風景を最後に楽しんでダケ道をゆったりと降って最後のガレたあたりでようやくシューを外すほど雪はあった。そして正面谷の流れにかかる木橋を渡れば大山口で本日の山歩きは終わったも同然だ。コヤマノ岳手前から抜かれたり抜いたりしながらの彼とは大山口で別れた。

 でも大山口からはさすがに堂満岳へ多くの踏み跡があり、武奈より歩きが短いだけに人気があるのだろうか。来月には堂満岳にも登ることにしよう。こちらはJR比良駅(16:45)には大山口から45分ほどの歩きで今日は朝から7時間の歩きだったが、もう少し雪深ければ8時間くらいの予定をしないとダメだろうが、無理をしないで今日くらいが時間的にリミットで大雪ならば下山時が暗くなってしまうことだろう。

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