鈴鹿 文三ハゲから綿向山 '13.1.27 小雪のち曇り

 熊野神社-水木林道終点-文三ハゲ-綿向山-北峰-綿向山-南尾根-ブナノ木平-P992-塩ノ道峠-東山橋-熊野神社

 鈴鹿山脈の南西に位置する綿向山は1110mの低山である。しかし、冬期には雪多く樹氷でも楽しめる山として登山者の人気は高い。この度は表参道や竜王山コースの一般ルートではなく、熊野集落から取りつき、大崩落続く急峻な文三ハゲを登るルートを経由するコース取りであった。

 そして、綿向山頂から北向きへの稜線は見事な樹氷が見られ、感動の小さな山旅となったのである。さらに下山ルートでは南尾根の取りつきの急坂で、まずはころびの練習をした後にブナの木平のすばらしき雪の大海原のような平原で心行くまで雪景色を堪能しながらの昼食は美味そのものであった。

 しかし、その後のP992からの樹林の中の歩きにくい大斜面の急峻さに手こずりながらのシューだったが、あのピークでアイゼンに切り替えるべきであった。だが、面倒だとそのままの装備で下り歩きを継続してしまったのが唯一失敗の巻きだったのだろうか。

 では本日の歩き、そのさまを追ってみよう。

 さて、この寒村の集落は白壁の美しい村に見えた。熊野である。わずか十軒ぐらいの小さな山村のようだが、静寂そのものの環境は心の底まで浄められる思いがする。村の中には、老樹にかこまれた熊野神社が建ち、おきまりの神体山もそびえている。この熊野神社(7:55~8:10)の冷え冷えと冴えわたる静寂の中ではアオゲラかな、それともコゲラだろうか?、いずれにしてもキツツキの仲間によって森の中によく通るドラミングが続き、大木の杉を見上げるも姿が見えない。

 そして昨年だろう、真新しく建て替えられた小さな鳥居が晴れやかだ。この鳥居は神明系様式の中のひとつであり、茨城県鹿島神宮で有名な鹿島鳥居といわれているものである。そして注連縄にはサカキが束ねて提げられていた。鳥居様式について一部ふれてみよう。(画像クリック)

 鳥居様式は大きく分けて神明鳥居、明神鳥居があるようだが、今回は前者の鳥居をみよう。

◎ 神明鳥居は神明系を代表する造りで、最もシンプルな姿である。とりわけすべての作りが円柱系でできているが、最大の特徴が貫が外に出ていない。

◎ 鹿島鳥居は笠木の端が斜め切りにされて、貫は外に突出している。しかし、大きな特徴は貫が円柱でなく、四角でできている。ここ熊野神社の鳥居がこれだ。

  さらによく似た神明系の中でも有名な神社の靖国鳥居、伊勢鳥居についてもふれてみよう。

○ 靖国鳥居は笠木は丸太でできており、貫が外に突出されなくて、円いのではなく四角となっている。

○ 伊勢鳥居は笠木が五角形で、端が斜め切りになっているほかは靖国鳥居と同じ構造である。


 さぁ、山歩きにうつろう。きつつきのドラミングをBGM代わりに聞きながら準備して8:10スタート、水木林道の最初は雪も少なかったが次第に高度を上げると新雪が増加しだし、1時間半で文三ハゲ手前で林道終点(9:35~50)で、文三ハゲの急登にそなえてここでアイゼン装着をしよう。この後すぐ右へ細い流れを雑木の中に潜り込んでから、わずかに林道を上がって文三ハゲの急登に張付くこととなるのだが、その様子は画像から想像していただこう。

 半時間たらずで文三ハゲをやっつけた。(10:15~25)一本立てた後は右にガレを注意しつつ、こんどは緩やかな登りの尾根をいこう。でもこの尾根の見事な樹氷にしびれるほどの感動であった。この景色みたさの寒山行である。でもわずかで綿向山山頂到着(10:55)であった。でもまだみな元気だ。さらに北峰へ進もう。

 竜王山分岐から北峰ピークまでの稜線散歩で樹氷を楽しもうと可愛い雪庇に注意しながら、これまた見事な樹氷見物であった。う~ん、これに青空がほしかったが・・・贅沢はいうまい~、北峰からの引き辺しでシューに履き替えて山頂から今度は南尾根だ。昼食はブナの木平でしよう。


同行のNさん提供

 山頂に戻ってくるといつの間にやら大勢の人たちが昼食中で、かたわらでは子供二人がヒップソリで歓声をあげて遊んでいる。その横を我らは進んで南尾根に取りつくも、すぐに急坂でまずは最初のコロリンコの練習だ。このような雪上では横向きへのすってんころりが原則で、前後にやると手首、肘などの骨折が危険であろう。

 そして今日一番の雪景色を目の当たりにした喜びは筆舌につくしがたいほどの大感動となったのである。お~この白銀が呼んでいる景色をみよう!

 ブナの木平で美味しい白銀の世界を御馳走にしての楽しい食事(11:47~12:30)がこれまた最高であった。これぞ高級レスランの無味乾燥のテーブルを囲むよりずっと高級料亭であろう。あまりに楽しくて気がつけば小一時間も居座っていた。
 十二分に休養して腰をあげた我らは南尾根の後半戦の厳しい道のりが待っているのをはっきりとは分っていなかったのだ。10分も歩かないうちに992ピークだった。

 そのピークには3本の黄色いテープの中へ902Pとあるのは間違いでP992が正しいのだろうが、問題はこの後の下りの道が樹林の中となって、さらにすごい急坂となったのだ。今回の歩きの中でもここの急下りを含めたP992から塩の道峠までのほぼ1時間の間が一番の難所ではなかったのではと思っているのだが・・・、もっともこの部分をスノーシューで降りたための感想かもしれない。やはりこの部分の急坂はアイゼンが妥当のようであったと思っても後の祭りだった。

 そしてその後の南尾根も小さな支尾根が繰り返し出てくるため、初めての場合はその都度磁石と地形図で合わせながらの下りが必要であろう。そのうちに山仕事の道にも出会うことになるのだが、何も考えずに歩くとまたすぐに西向きの小尾根へ進むべきところを、作業道どうりの南へ行きかねない点も注意が必要のようだ。

 この難所をどうにかして下って、響きのよい「塩の道峠」だが、この峠はコルという鞍部以外にこれといった特徴のないために見逃しやすいだろう。この峠から小さなコブを登り返して、これより右折は西向き尾根を下って、ややフラットな炭焼跡?のような場所でMさんによる”森の喫茶店”の開店でうれしいココアタイムとなったのだ。難所を終えたあとだっためにホッと一息いれる時間帯を考えていただいたリーダーに大きな感謝であった。 

 その内に沢音が聞こえるようになってその流れにぶつかった後はその沢に沿って降り、細い流れを渡ると次第に道は広くなりだし、そのまま行くと林道に降りて最初の橋でシューやアイゼンを着脱となった。その後林道が左上からも降りてきているが、右への東山橋と標示されている橋まで帰ったくると本日のバリルートは終焉を迎えるのである。

 そしてその橋から右への舗装林道をわずかに上がると、左には大正11年に「国の天然記念物」の指定を受けている珍しい「ヒダリマキガヤ」の大木が茂っているのが見られる。もっともヒダリマキガヤといっても見た目には普通のカヤの木と何ら変わりは分からないのだが、説明板によるとその種の種皮にある浅い溝が、普通は直線であるのに対し、この種はその溝が左巻きとなっているのが珍しいと解説されていた。
 帰ってきた熊野神社(15:00)は人の姿すらない森閑とした森そのものであった。

 同行のNさんによる歩いた軌跡、タイム記録は次のとうりでありましたが、何かにつけてのお気遣いありがとうございました。また「綿向山を愛する会」のMさんにはリーダーとして引っ張っていただいたし、それにSさんTさんBさんにも初めてにもかかわらず、楽しくご一緒させていただいたことに感謝申し上げます。ありがとうございました。

《 熊野神社8:10-堰堤手前でアイゼン装着9:31~9:50-文三ハゲ上部1 0:24 -綿向山10:57-北峰11:12~11:27-綿向山11:37-ブナの木平 11:47~ 12:30-P992 12:37-塩の道峠13:33P757 13:43-コ コアタイム 13:52~14:24-東山橋14:53-熊野神社15:02 》

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