安倍奥 山伏から小河内山 '12.6.4~5 前夜発、避難小屋一泊、夜行帰り

 

初日 西日影沢登山口-蓬峠-稜線分岐-市営避難小屋-山伏-大笹峠-岩ノゲート-T峰-小河内山(U峰)-V峰-以下山伏~小屋まで戻る(泊) 
二日目 小屋-山伏-新窪乗越-巻道-大谷嶺-五色ノ頭-八紘嶺-富士見台-分岐-新安倍峠-林道-登山道入口-登山口(梅ケ島温泉) 

 関西人には安倍奥の山域は馴染が薄いと思われます。以前から気にはなっていましたが、あまりにも遠いことからどうしても足がむきませんでした。 しかし、ガイド協会の仲間から未見のホソエカエデとヤマイワカガミが見られるとの情報を得て、そのヤマイワカガミは6月初めに咲くと聞き、ようやく重い腰をあげることとなりました。

 路線バス使用となりますと平日であれば、新田バス停から歩く時刻は一番に乗っても10時前となり、今回の行程は不可能となりますが、山伏に登ると話したガイド仲間は「一緒に登りたいが、今日は午後から仕事があって、、よし静岡駅前から登山口まで送ろう」と気前のよい返事がもらえての実施と相成りました。持つべきものは仲間だと感謝でした。

 前置きが長くなりましたが、はっきり言って天候がかんばしくはなかったのですが、友からのサプライズで今回の山旅は大成功となりました。さぁ、まずは初日のレポです。安倍奥の雄である2000m峰の山伏(2013.7m、 2等三角点、日本300名山)です。

 西日影沢の赤い火の用心の垂れ幕地(8:00)からいよいよ沢沿いを何度も渡渉しながら、次第に高度を上げて深山の渓谷らしさが見事で、足も軽快に運んでくれます。今は使われなくなった山葵田が裏悲しさを見せています。階段状の山葵田には水も枯れていますが、広場から道沿いまでヒメレンゲが多数咲き、一面を黄色く染め上げて思わず足が止まります。
 新しく付け替えられた沢筋の三つ目の橋を渡るとすぐに二つ並んだ大岩の間(8:30~35)に着きます。あたりは大木の新緑が気持ちよく、よしここで一本だとすぐにザックを下ろします。そうだこの大岩の上には山葵小屋があったとネットで見ていたので、イタヤカエデの古木のそばを上がると大岩に隠れるようにして青い波板の小屋がありました。さすがに中は荒れ放題で思わず目をそむけましたが、よくもこんな高いところにまで、山葵の作業のために小屋を作ったものだと感心するばかりでした。多分作業のために寝泊まりもされていたような雰囲気でもありました。(以下画像クリックで拡大画像です。)

西日影沢の登山口 大岩の裏に立つ山葵小屋
 

 その後も雰囲気抜群の新緑続く谷筋を悠々と貸切山登りです。足元にはヤマクワガタ、クルマムグラ、イワハタザオ、ミヤマハコベなど小さな山野草が咲いています。大岩から15分ほどで最後の水場です。青いコップも用意されており、冷たい水はなかなかのものでした。この先にも沢の流れが登山道沿いにもありますが、やや細い流れで空容器への補充は暇がかかることでしょうから、補充はやはりここより下の先ほどの水場で確保したいものです。

イワハタザオ 最後の水場
 

 大岩から一時間弱で蓬峠到着(9:20~30)、ここまでにもいろいろな新緑が見られます。目に止まったのはヒコサンヒメシャラでした。登山道沿いにあの横線の入る独特の木肌ですぐに分かります。もちろんコシアブラやヤマグルマなども見られます。でもなんといってもカエデ類が一番多い道で、これは紅葉時期ならすばらしい光景が期待できそうだななどと思いながら、蓬峠でベンチへ腰を下ろします。
 この後はさきほどよりも高度稼ぎがきつくなってきたようです。遠目にも華やかだなと分かるトウゴクミツバツツジが花びらを落として終盤でしょう。さらにシロヤシオはもっと花びらを落としています。白い花びらはムシカリで、こちらは今が盛りのようです。上ばかりでなく足元を見るように歩くとネコノメソウの仲間がまだ咲き残っているようです。これはヨゴレネコノメかな・・あれこれネコノソウの名を考えながら次第にきつくなる山道を登りあげて行きます。

新緑の中の蓬峠
ヒコサンヒメシャラ木肌に横線
トウゴクミツバツツジ

 あっ、稜線かなと広くなった道幅で急に平坦地へ突き上げます。すると分岐の表示(10:45)が林立です。直進すれば山伏山頂は分かっているのですが、今日はその先の小河内山まで足を延ばす予定のために、ここは左へ下って避難小屋へ荷物をデポに向かいましょう。
 10分で静岡市立の避難小屋到着でした。20人は泊まれるだろう大きく立派な小屋(10:55~11:25)でした。すぐに昼食をとります。この後もアップダウン続く道のために荷をできるだけ軽くしようとの魂胆でした。そしてサブザックに最小限の荷物を入れ替えて山頂へ向かいます。

避難小屋 山伏山頂

 20分たらずで山伏(11:42~45)でしたが、あいにく一面はガスで真っ白、富士はおろか南アの山々も見えません。それよりも小河内山のヤマイワカガミでも見に行こうと反対側の急な大笹峠へ降ります。降りだすとすぐにネコノメソウの今度はやっ、これは何だ?、、ツルネコノメソウかな?まだ咲いているのかななどと思いながら先を急ぐと15分ほどで車道が見下ろせ、大笹峠(11:58~12:00)です。
 今度はすぐに向かいの尾根に取りつきます。さぁ。これからは道は完全に細くなって、考え事などしながら歩くとどこへ向かうのか分からなくなるほど踏み跡は消え入りそうな道となります。そんな道にはトウゴクミツバツツジ、シロヤシオにムシカリと山伏への道と同じ花が見られます。
 でもお目当てのヤマイワカガミはまだかなと思い出すとすぐに出ました!。そうイワカガミの完全な白花であるヤマイワカガミが斜面にチラホラ咲いているではありませんか。中には赤い普通のイワカガミも混じって咲いています。

大笹峠 トウゴクミツバツツジ シロヤシオ ヤマイワカガミ イワカガミ

 夢中で撮っていましたが、あたりは次第にガスがかかって雨が降るのではと心配な様子です。もちろん雨具は持っていますが、まだまだT、U、V峰を踏まねばなりません。小河内山は白根南陵の一番南端の小さなピークで訪れる人も少なく、マイナーな山ですから、このように踏み跡すらできない状態です。しかし、このように奥深く、人影もなく、静かな静かな秘境のようなピークを踏むのも素晴らしいものでしょうから、何としてもV峰まではとの思いでここまで来ていたのです。よってヤマイワカガミの感激ばかりではいられません。

 さぁ、先を急げと歩き出します、前調査で分かっていた岩のゲート地(12:30)通過で、空模様の様子で普段から早い足が一段と早くなってきます。でもまたヤマイワカガミが咲いています。どうしてもやっぱり足は止まってしまいます。ここへは今度はいつ来れるかしれないのだからと撮影にも気がいきます。
 しかし、空模様はますます思わしくなってきています。急げ!、、と半時間弱でようやく枯れ木の大木立つT峰らしきピーク到着(12:56)、そしてU峰2075.5mの3等三角点地が小河内山(13:05~10)です。T峰はもちろん、ここもまったく表示はありません。
 東側はガレて切れ落ちています。短い笹原の中にわずかに頭を出す三角点にタッチしてよう来たねと労ってくれているような気になったのは初めてのような思いでありました。ほっとしてここでチーズを口へ放り込みます。

岩のゲート ヤマイワカガミ T峰 小河内山(U峰) V峰

 さぁ、次は最後のV峰だと腰をあげます。次第に道が分散しかけます。でも尾根をはずさずに薄い踏み跡を追って行きますと10分足らずでV峰(13:22~25)らしき字の消えた白い鉄板が木に挟んであります。やれやれ何とか小河内山の三つのピークを踏むことができたのだと感慨にふけりながら、笹の薄くなったところにはわずかにコミヤマカタバミが微笑んでくれているように思えたのでした。

 引き返して小河内山カールの雰囲気のいい箇所でしたが、ここだなカールっていう感じの処はと立ち止まったのですが、あたりは霧にむせぶような白いベールの中で、う〜ん天気がよければ来た人はほとんど昼寝でもしたいなと思わせているこの地へ再訪してもいいなぁとの心がふつふつと湧きあがるのでした。
 そうだ、感傷に浸ってはおられません。いつ雨がやってきてもおかしくはなさそうな空模様が続いています。どんどん足早となって目の前に切り通しの車道である大笹峠が目に入ってきたので時計を見ると14:30、峠から小河内山V峰までの往復を2時間半でやっつけたようだ、これって無茶苦茶な歩きではないの?と一人吹き出しながら、この後は今日最後の山伏への登りに備えて階段に座って一本いれるのでした。

 さすがに疲れ切っていました。心配していた雨にも会わずに山頂(15:00~05)までもゆっくりゆっくり25分もかけて登りました。山伏の展望も相変わらずどうしようもありません。しかたなく小屋へ帰りましょう。どうせ誰も来ていないだろう。大きなホテルを一人っきりで使わせてもらおう・・・
 と思いながら小屋(15:17着)にはやっぱり無人で静かなものでした。クールダウンのストレッチを入念にした後は、さぁ、1分先の水場だと夕食用に1.8リットルほどを汲みました。この水場は最高のロケーションです。流れもとうとうとして美味しく、何と言っても近いのが喜ばれます。ただ難を言えばトイレの設置がないのがですね・・・案内では下り20分の百畳峠にあるトイレを利用願います。とのことでしたが???、 ま、街中ではないのです。ここは2000m直下の深山幽谷の雲上にある小屋なのですから、致し方ありませんよね。

山頂のありさま(涙) 鹿食害防止柵
水場の様子

 あぁ、本日の一日は疲れました。それでも夕食準備の後、食べ終わったのは5時半過ぎでした。NHKのラジオをBJMに、文庫本をめくり出しましたが、すぐにうとうととなってしまう始末でした。小屋の外壁の温度計は10度でしたがそう寒さは感じません。
 でもしばらくしてパタパタとなんかの音に目が覚めました。どうやらトタン屋根のようで、雨音です。わぁ、雨か?明日の行動はどうしよう?などとあらぬことなど思いめぐらすようになってきてしまい、そんなことから眠られなくなってしまいます。
 でも雨音もそう大きくはならないようです。しばらくすると寒さでふるえる様な気がしてトイレです。やっぱり雨で温度が急激に下がっているようです。さぁ、ホカロンを貼りましょう。そしてフリースも着こんで万全の対策を講じて眠りにつきます。

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ポンポン山