富士山の花’14.7.15~17 曇りまたは晴

 『八面玲瓏という言葉は富士山から生まれた。東西南北どこから見ても、その美しい整った形は変わらない。どんな山にも一癖もあって、それが個性的な魅力をなしているものだが、富士山はただ単純で大きい。それを私は「偉大なる通俗」と呼んでいる。』とあの日本百名山の中で深田久弥が書いています。

 この美しさの秘密は富士山がごく新しい火山であり、浸食がほとんどすすんでいないところにあるようです。冨士の火山活動の始まりは古富士火山までだと約八万年前、その前身である小御岳の活動まで含めると七十万年ほど前にまでさかのぼるのですが、現在のようなみごとな新富士火山体をつくりだした活動はたかだか五千年~六千年まえに始まり、およそ千年まえに終了したばかりと、山の自然学で名高い東京芸術大教授小泉武栄氏が言っておられます。

 また、この千年まえまで続いていた新富士火山の活動は古冨士火山の活動に比べると大変おとなしく、溶岩と火山砂礫のスコリアが交互に噴出されていたようです。そのために山体がどんどん高くなって、ついに3776mにまで達したとのことです。噴火の様式が変化しなければ、これほど高くはならなかったに違いないと教授は述べています。

 なお、富士山は2200年前の大きな火山によって火道が詰まり、山頂からの噴火ができなくなったといわれ、それ以降は側火山からの噴火がもっぱらとなったといわれています。側火山は北西斜面と南東斜面に集中し、最大の側火山が1707年(宝永4年徳川綱吉の時代)に噴火した宝永山(2693m)です。なお、富士山にはハイマツは分布しないし、ライチョウも棲まず、要するに植物の垂直分布帯や動植物相はまだまだ未熟であると同教授は書いています。

 ならば富士山にも美しい花が咲くのだろうか・・・。と思われるのですが、あにはからんや、残念ながら植物たちは多くは期待できないでしょう。なぜなら、火山性の荒原が広がっており、斜面には大量のスコリアが堆石し、植物たちには死活にかかわる問題で、種子や株が常に埋没の危険にさらされていることを意味すると教授もいっています。さらに水分が乏しく地表面の温度が極端に高くなるといった厳しい条件があり、こうした条件に耐えうる、わずかな種類の植物たちだけが生存可能となっているようです。

 そのようなたくましく生きている種は数少なく、寂しさを隠せませんが、次のようなものでしょうか。

オンタデ、フジハタザオ、ミヤマオトコヨモギ、ムラサキモメンズル、イワオウギ、スゲの仲間であるコタヌキラン、イタドリが主たるメンバーのようです。

         
オンタデ(タデ科)     フジハタザオ(アブラナ科)    ミヤマオトコヨモギ(キク科)

 さらに、今回出会えた種は次のようなものがありました。(以下画像拡大で説明等あり)

タケシマラン、イワツメクサ、ベニバナイチヤクソウ、ツガザクラ、イワヒゲ、コケモモ、ミネヤナギ、ミヤマハンノキ、シロバナヘビイチゴ、トリアシショウマ、ツマトリソウ、マイズルソウなどでしたでしょうか。

 今回は吉田口コースからで、五合目に泊って、八合五尺でまた泊まり、山頂お鉢めぐり予定でした。しかし、例年より残雪多く、時計逆回りでの剣ヶ峰直下が特に雪多く危険なために通行止めとなっていたことからお鉢めぐりは断念でした。
 加えて、折あしく早朝からの強風により久須志神社に参拝後は、すぐの下山となってしまい、剣ヶ峰は踏めませんでした。でも辛うじてご来光遥拝が叶いました。


山中湖の上あたり、道志方面からのご来光

周りの山は左から杓子山、鹿留山に御正体山などの低山が並んでいます。

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