飛騨 クマガイソウ咲く簗谷山 ’14.5.13 晴

 南尾根ルート→簗谷山→ぶなの木ルート

 

 今回は自然の中で咲くクマガイソウ(ラン科)が見られるということで、遠路はるばる岐阜県まで遠征となりました。そして植物園でしか見たことのない満開のクマガイソウを目の当たりにして大興奮となりました。まずはその花をご覧ください。

     

 ウィキによる名前の謂れは次のように記されています。

『クマガイソウ、アツモリソウの名は、膨らんだ形の唇弁を昔の武士が背中に背負った母衣(ほろ)に見立て、がっしりした方を熊谷直実(くまがいなおざね)に、優しげな姿の方を平敦盛(たいらのあつもり)にあてたものである。花色がそれぞれ白、赤っぽいため源氏の白旗、平氏の赤旗に見立てたための命名ともいわれる。

 ともあれ、栽培のための乱獲によって自生を見ることは今やまれであるようで、クマガイソウは環境省のレッドデータブックで絶滅危惧II類とされている。日本の県レベルではさらに高いレベルで絶滅が危惧されている県もある。これを乱獲、盗掘することはもちろん、乱獲、盗掘されたものを取り扱う業者から購入することは、自生地の損失を助長する行為で決して行ってはならない。』と自生地の現状、保護での記述もあります。登山者もそのあたりを十分心したいものです。

 さて、本日のお目当てはこれ一つではなかったのです。続いてマルバノキ(マンサク科)です。実はこの種は相当昔に岐阜県の山歩きの中で咲いている花を見たことはあるのですが、その山がどこであったのかすら記憶にないほどの種なのであります。

     
 マルバノキ(別名ベニマンサク)葉表、開花は10~11月   葉は薄く、葉裏も無毛、葉柄は4~7cmと長い 

 そして分布域は中部地方、近畿地方、広島県、高知県と図鑑にはあるのですが、近畿圏の山では出会ったことはありません。どうやら岐阜県に圧倒的に多い樹種のようです。本日の山でも一番多く見たような気がしました。岐阜県と遠方のために花の写真はやっぱり、紅葉シーズンの11月頃に咲く花を京都府立植物園で撮るより仕方なさそうですね・・・

 さて、最後のお目当てはヒトツバカエデ(カエデ科)(別名マルバカエデ)でした。これも比較的珍しい樹種でもあります。でもこちらは前者と違い、分布域は相当広いようです。近畿地方でも何か所かで出会っています。しかし、咲いている花には出会えてはいません。
 このカエデらしくない点は切れ込みのない単葉であることが独特であります。でも山歩きの中で見れば、ムシカリなども葉が酷似しているように思われます。今回もそのどちらもありますから葉を比べて見ましたが、一見すれば間違い易い種かも知れません。

         
 ヒトツバカエデは裂けないのが特色、もちろん対生    側脈の姿も独特な模様、葉先も尖りが長い    花時両面とも毛があるが、成葉ではほとんど無毛

 ムシカリ(スイカズラ科別名オオカメノキ)(冬芽はバルタンセイジンとして親しまれている。もちろん、こちらも対生)の葉と比較してみてください。

     
左の葉裏から分かるように、側脈が裏面に突出で目立つ    横の細脈、しわが目立ち、側脈の先が分かれる

 山野草類ではなんといってもこの時期はヤマシャクヤク(花柱が2~4個普通3個が多いがここでは2個が多かったようです。なお、ベニバナヤマシャクヤク、シロバナベニバナヤマシャクヤクは5~6個といわれています。)に人気がありました。

     
品位ある山の花と解説にあり    葉裏は帯白色 、他二種は軟毛あり

 でも、私は今シーズン何度か見ていますからクマガイソウの余韻が消えません。しかし、端境期とはいえ、山野草はタニギキョウ、フウロケマン、ほとんど終わりのニシキゴロモ、フタリシズカ、以外にはまったく咲いていませんでした。ネットからの予習ではワダソウが見られると記載があったため期待していたのですが目にしませんでした。

 そうそう、登山口あたりや山の中でも見ましたマムシグサ(サトイモ科)はコウライテンナンショウだろうといっていましたが、どうやら付属体からみて「スルガテンナンショウ」のようです。静岡県の駿河、今回これが私にとって初見でした。

         
 タニギキョウ(キキョウ科)   附属体は先端が膨らみ傾斜する。    葉は鳥足状複葉 

 それより樹木の方でいろいろ楽しませてもらえました。そして樹木に名札がたくさん取り付けられて、今回のように植物好きなグループには最適な山歩きとなりました。名札のついていたものは次のようなものでしたでしょうか。(順不同です。)

ヤマザクラ、イヌシデ、キハダ(木の肌が黄色、木肌が胃腸薬に)、ハリギリ(成木には刺多く古木で丸くなり)、イイギリ(公園樹、街路樹)、マルバアオダモ(冬芽はウルトラマンとして親しまれている。また材が固いところから野球のバットの木ともいわれる。花は終わっていたようでそのあたりの白さも見えなかったが・・?)、サワラ(気孔がXに見える。Yはヒノキじゃ、Wはアスナロといわれるが・・、この内容の話しの一番最初の時点でほとんど白い気孔が見えなかったのはネズコともいわれるクロベと思われますが・・?)、ヒノキ、サワグルミ(雌花は下垂で開花)、オニグルミ(雌花は直立で開花が同定ポイント)、フサザクラ(カツラの花に酷似、カツラは対生、こちらは互生)、カナクギノキ、ユクノキ、・・控えなかったため、他にももっとあったはずですが、多すぎて思い出せません?・・・トホホ


サワラ
ヒノキ

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 そして名札はなかったのですが、花や葉あるいは樹皮等で判明したものは最初に述べたマルバノキ、ヒトツバカエデ以外に次のような種でした。

ムシカリ、コハウチワカエデ、ハウチワカエデ、コミネカエデ、イタヤカエデ、ウリハダカエデ、チドリノキ(この木は少し離れていたために説明は控えました。)、クマシデ、サワシバ、シロモジ(葉は3浅裂、多数あり)、マルバマンサク(葉先が尖らずやや丸っぽい)、ユキグニミツバツツジ(葉柄無毛で同定)、シロヤシオ(まだほとんど蕾、別名ゴヨウツツジと木肌が松に似るためマツハダともいわれる。)、アカヤシオ(花色からそう思えたが、樹高から手に取れず詳細観察できず?、花柄と短い雄しべ毛あり、その他無毛などが同定ポイントですが・・)、ウワミズザクラ(試験管ブラシのような白花を咲かし、花序の下に葉が3~5個つく。近縁種のイヌザクラの花序下に葉はつかない)

ブナ(別名シロブナ)、イヌブナ(別名クロブナ、樹皮皮目多く黒っぽく見える。株立ちが目立つ)、ミズナラ(葉柄短く目立たない)、コナラ(葉柄約1cmあり)、ミズメ(木肌が桜類にそっくりだがカバノキ科と別グル~プ)、ナツツバキ(別名サラソウジュ、近縁種にヒメシャラ、ヒコサンヒメシャラあり、三種の中で花が一番大きいのがナツツバキ)、リョウブ(花穂が長く垂れ下がる)、ホウノキ(トチノキの葉と見間違い易い)、モミ、シラカバ(ダケカンバの仲間)、ケヤキ、コアジサイ、ツルアジサイ(別名ツルデマリ、鋸歯が片側だけで30個以上と細かいが、近縁種イワガラミは片側20個以下と鋸歯は少ない、イワガラミはもむと青臭いがツルデマリは無臭)などの話をしながら約5Hも亀さん歩きの、花巡りのんびり歩きでした。しかし、バラ科のザイフリボクも見られるとネット上で見ていたのですが、花が終わっていたのか目につきませんでした。
 なお、南尾根途中からや山頂にても御嶽山、乗鞍岳などの眺望もありました。

 最後に当日、水の流れのあるあたりのヤマシャクヤクをみなさんが見に行かれている間に、当方はあまり見慣れない葉が目につき、考え込んでいました。帰宅後調べてみますと、どうやら私もこれまでから方々で見ていたアワブキ(アワブキ科)と判明しました。

 なぜ、すぐに同定できなかったかの理由は葉先がハート形の凹みとなった面白い特徴的な葉姿となっており、尖った葉はほんの少ししかなかったものです。まあ、3mほどの小木と見たのですが、実際には幼木でした。アワブキは成木になると10mほどと高木となります。
 本来の尖った葉ばかりなら、側脈が20~30対ほどと、極めて多いのはよく知っていましたのでアワブキとすぐ出てくるハズですが、あまりにもハート形の葉先の姿が多い木に惑わされてしまったのが原因でした。二枚の画像はどちらも同じ株についていた葉ですが、左の葉姿の方が圧倒的に多かったものです。みなさんならどちらが本来の葉だと思われますか・・?。もちろん、葉先の尖った方が本来の姿です。では、どうしてハート形になっていたのかは宿題です・・・汗

     
 ほとんどの葉先が凹んでいます。    枝違いのこちらは尖っています。

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