生駒 関西で咲くアオモジ '13.3.26 曇り

 今年もアオモジを見に行ってきました。関西の山人には比較的珍しく山歩きの中でも出会いのほとんどない樹木です。まずはそのあたりから入ってみましょう。

 アオモジ(クスノキ科ハマビワ属)の分布は岡山、山口県以西、四国や九州に見られ、特に九州西部の長崎県や九州南部に多く見られ、また屋久島でも分布しているようです。要するに暖地性植物として位置づけられ、大群落地も発見されているようです。
 しかし、関西圏には分布域からは遠く離れているようですが、近年なぜか奈良県生駒山系に多く咲くことが知られてきているようです。

 生駒山系のアオモジは結論からいいますと、やっぱり自生種ではなく、以前に奈良県の花卉栽培農家の植栽樹が野生化したもののようです。。それは大学や植物研究家の方々の調査による次のような記述論文等を拝見し、生駒のアオモジは野生化だと教えられたのでした。他の植物でも同じで、このように人の手による移動とはいえ、野生化のアオモジも次第に自生のように見られていく運命にあることでしょう。

 奈良県の平群町檪原、福貴畑、久安寺は、以前には山間部の花卉栽培農家が多い所であり、現在ではこの地域一帯にアオモジもたくさん見られるが、その中心は久安寺のようである。当地では1960年代後半、花卉栽培をさらに盛んにしようと、先進地の徳島県を見学し、苗を持ち帰って植えるとその後、しだいに近くの山で繁殖するようになった。山では伐採地に生えやすい陽性の強い樹木で、昨今山麓での栽培はほとんどなく、付近の山で見られるアオモジは野生化したものである。また、アオモジは道路から短い距離の位置に存在し、道路等の建設にともなう撹乱環境で分布拡大する移入種である。  
    (奈良植物研究会、大阪府立大学森林工学の収録論文を参考にさせていただきました。)

 なお、昔から当地ではアオモジを植え、切り花としての花卉栽培農家が多かったようですが、その頃には現在のように山には野生化することはなかったとのことです。昔には野生化が見られなかった理由としては、そもそもアオモジの切り花で業とするのは、雌雄異株であるこのアオモジの雄花が必要であったために、どうやら雌花は植栽から外されていたとしか考えられないとの想像が論じられているようです。


 このように生駒山系で見られるようになったアオモジの概要を知ったうえでの植物観察として、今回、折よく満開の群落地を訪ねることができたのでした。しかし、この樹木は落葉小高木で高さ5㍍ほどになるとのことから、揃えたようにみな高く育っており、写真撮影には泣かされる樹種でもあります。そのような言い訳をまずしておいて、ピンボケ写真をご覧いただきましょう。

アオモジの雌花 アオモジの雄花

 

群生状況の様子をもう少し触れてみましょう。

 この地はやや高いところで、日当たりの極めてよい笹薮の小ピークの周りにぐるりと、若木から太さ10cmくらいのものが数え切れないほど多数生えていました。もう少しアオモジの様子を説明してみましょう。

・アオモジの仲間には他にハマビワ、バリバリノキ、カゴノキがありますが、関西ではカゴノキは普通に見られますが、他の樹種はほとんど見かけません。

・樹形は落葉小高木で、高さ3~5mほどに成長し、球形~楕円形の樹形をつくると言われています。若いものがほとんどでしたが、中にはおよそ15年生(胸高直径7~10cmくらい)と思われるものもあったでしょうか。ただ、園芸業者?でしょうかね、太いものを切り倒した新しい切り口のものも転がっているなど、切り花として売買用に切り倒し、小さくして花の枝だけ持ち帰ったのではというような感じのものが、昨年来たときも今年もありましたが・・・、山野草と異なり、樹木ですからそう神経質になることもないかも知れませんが、商売用に持ち帰るのは如何なものでしょうかね・・・?

・雄シベ9個で、内側3個の基部に黄色の腺体が2個ずつついています。ただ、この2個の腺体は外からはほとんど見えないようです。雄シベの先の部分は花粉を作る役目の葯というのですが、その葯がそれぞれ4室で、ひと花で計36個もの黄色い葯があるために、遠くから眺めると黄色いお花と見まがうようなのは、この部分が黄色みの強い原因のようです。もちろん、雌花には雌しべ1個と葯が退化した仮雄しべ9個があり、内側3個の仮雄しべ基部には腺体が2個づつ雄しべと同じようにつきます。なお、雌しべの子房は球形で花柱は短いです。
 また、雌花の花弁状の総苞片は雄花より小さ目で雄花の4~5個に対し、3~4個とこちらも少な目です。そして花被片も雄花の約3mmで6個ですが、雌花はやや小さく、ともに花のあとには脱落します。

 

・新枝は暗緑色で無毛、葉とともに芳香があります。この新枝は暗緑色がアオモジ(青文字)の名の謂われのようです。

・果実は直径5mmほどのほぼ球形で、9~10月ころに赤色から黒紫色に熟し、食べると辛いようです。

・用途としては、庭木としても植栽されたり、果実や材にはレモンのような芳香と辛味があって香料にもしたようです。
 なお、別名ショウガノキ、コショウノキや、九州では方言名としてヤマゴショウなどともいわれているようです。また、材は白く、香りのよいことから爪楊枝にも使われるようです。そして花色が黄色みが強い雄花は切り花に利用されているようです。

 しかし、帰りぎわまで平群一帯の山麓では、あちこちであれはアオモジではというくらい見かけました。それも不思議と雄株と雌株が近くに見られたような気がしました~・・。なお、今回歩いた中で見かけた山野草などのお花たちは、まずスミレ類ですが、タチツボスミレはもちろん、ニオイタチツボスミレ、葉脈が赤く見えるアカフタチツボスミレに、シハイスミレとその変種のマキノスミレも咲いていました。山を下りて街中にはヒメスミレも見かけました。なお、よく似たノジスミレは私の最寄駅付近で見かけました。

 また、スミレ類以外ではイワナシ、ショウジョウバカマ、ヒメカンスゲ、ヤマネコノメソウなどが咲きだし、山野草はまだまだこれからのようすでした。樹木ではナワシログミの実がまだまだ緑色でしたが大分膨らんできており、ニワトコ、ヒサカキ、アセビ、ウグイスカグラが花を咲かせていました。それに植栽ですが、ミツマタ、レンギョウ、サンシュユなどいずれも中国原産の帰化植物ばかりが黄花で春を告げていました。

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北陸路の早春譜