比良 摺鉢山 '13.2.14  晴

 またも比良行きでした。どうしてもアクセスのよい山域となってしまいます。今回は比良山系の登山口として重要な基地となっている坊村としました。ここ坊村は、比良山塊の西側に流れる安曇川に沿った若狭街道にある集落ですが、年々この集落も人の姿も少なるのでしょうか、見るからに寂しそうな雰囲気が漂っているような気がしますが・・。
 古くは、回峰行の修行場であったようですが、今は葛川明王院だけがその面影を残しているところのようです。入口の地主神社は相当昔の創建の古い神社で滋賀県が明治36年に指定の重要文化財となっています。安全を祈願してからいよいよ明王谷沿いの林道を詰めます。(9:30)

 そして緩やかに林道を登り、半時間ほどで前方上には摺鉢山の頭がガスをかぶっているのが見えます。今日の予報は晴の穏やかな一日となるとのことですから、そのうちに青空も出てくれることでしょう。ほどなくアスナロの古木立つ三ノ滝の標示を左に見送り、そこより10分でワサビ谷に沿う伊藤新道を右に見て、さらに奥へ進みましょう。
 林道の雪は次第に増えてきます。前日でしょうか、スノーシューで下山してきた跡が残っています。多分汁谷方面からの下山でしたでしょうか。その跡を踏みながら口ノ深谷の標示を左に見て、右カーブしながら進みます。

 するとバス停からほぼ50分ばかりで、これより本当の山道となってくる実質的な今日の登山口である牛コバ到着(10:30~35)でした。シューはやはり夫婦滝のある右側の道、白滝谷方面からでした。私の取る方向にはこれよりノントレーです。ここで温度調整とスノーシューをつけましょう。

 さて、この牛コバという名ですが、昔、材木の集積される広場「木場」のことのようで、一休みする休憩地の呼び名でもあったようです。そうして牛とあるのはやはり作業にかりだされていた牛もここで休ませたのでしょうか。
 かって、琵琶湖側から比良山系を横断して安曇川へと向かう生活道路が多くあったといわれています。その名残として今でも縦走路稜線上に道標も立つ葛川越は、葛川坊村集落につながる地名が付けられています。葛川越は、古く明治の頃には荷車が通れるほどの広い道で、琵琶湖側の大物集落から米や野菜を、そして葛川の牛コバからは炭や薪を運んでいたとのことです。

 さて、牛コバから左折し道標の「大橋・南比良峠」の奥ノ深谷方面に入ります。無雪期にはここは岩ゴロの地ですが、今日は雪に埋まっているのでしょう。そして10分で赤い鉄板に「小さな火 まさかがおこす 山の火事」と置かれた注意書きあたりから直登の始まりです。(拡大画像は画像をクリック!)

牛コバ 摺鉢山尾根取りつき地

 山登りは普通、最初の斜面の取りつきはどうしても急坂登りとなるのはいたしかたありません。それを承知していますから少々きつい登りを苦と思わずに、いえ、トレーニングと捉えてむしろ楽しむような気持ちとしましょう。

 でも少し上がれば、ジグを切る道型が出てきますから、やっぱり楽な方を選択してしまいます。しばらくはその道なりに綴ら折れを追いましょう。そして道型が消えかかってまた直登の再開でした。次第に標高を稼いでいくとわずかに枯葉を残しているイヌブナが目立つようになってきます。雑木林は山歩きの人の心を喜々とさせてくれます。右を振り向くとごま塩の頭をもたげているのは、こちらの山と背比べしているかのような白滝山でしょう。

 さらに上がると真っ白な雪面はカーブを描き、樹林の影アートが続きます。もちろん見上げれば樹の枝ごしに青空の中から太陽光が差し込み、雑木林に混じってモミの大木が点在し、手つかずと思われる自然林がそこにはあるのです。なんともいえないこんな雰囲気が広がる地に一人の姿のみなのです。深閑とした森の一員として私は今、生きているのだと心うきうきの心境でまたうれしい。

 そんな有頂天な気持ちでシューは快調と思いきや、気温上昇で雪面が重くなってきています。シューでも2~30cmは潜り込むような状態でラッセルが次第にきつくなってきます。う~ん、これはたまらない、こんな歩きが続くのであれば、この先、烏谷山から比良岳を踏んで木戸峠、そしてキタダカ道を降るつもりだったのですがどうしよう?、との不安心が出てきだしてしまいます。

 心乱れだしてすぐに小さなピークの摺鉢山到着(12:15~40)となりました。真新しい山名札が下げられています。ここは展望の期待できる頂ではないのですが、冬枯れの頃には南へ蓬莱山が白く光り輝いて樹間に見え、その西側には以前は名もなかった1080m峰も頭を上げて見えています。

 
摺鉢山1006m 奥は烏谷山

 そして反対側の北方向にはコヤマノ岳左方向に西南稜でしょうか、真っ白に際立ってチラッと見えています。もちろんすぐそばの東向きには堂満岳も居ます。いえ、すぐそばは南東側の烏谷山の植林がはっきりと座っています。

蓬莱方面 武奈西南稜方面 堂満方面

 さて、ここで昼食とし、この先の行程を考えましょう。烏谷から比良そして木戸峠の縦走路稜線にはおそらく人は入ってないはずですから、完全なラッセル必要です。無雪期であればクロトノハゲまで約2時間ほどですから、1.5倍は十分かかるとみるにしても、志賀駅には暗くなってしまいそうです。こう考えるとすぐさま、今日は止めようとの意思決定となってしまいました。

 世に、麻姑掻痒(マコソウヨウ)という言葉のあるように、山歩きが思い通りにことが運ぶにはいろいろな面での条件結合によって目指すことができるのです。各々身の丈に合う山登りにするには、その条件を悟るのもその人の力量と考えることが重要ではないでしょうか。

 このように本日は負け惜しみながら、いさぎよくここで撤退としましょう。え~、せめて烏谷山まで行かないの?、との気持ちがもち上がりましたが、あのピークも数えきれないほど踏んで展望を得ています。そんなことからもう今日はイイヤとの心としたのでした。
 そうです、ロング縦走ばかりが山歩きでもありません。たまには短距離歩きもいいとしましょう。サッサと昼食を済ませた身は、シューの真白き山肌を蹴って駆け下りとしましょう。そして牛コバ(13:15~20)には40分弱で下山でした。登りでこの間を2時間ほどもかかったのですが、半分の時間もかかりませんでした。

 シューもまたここ牛コバで取り外します。そして後は明王谷林道をゆっくりのんびりツボ足を楽しむかのように半時間ほどで地主神社(13:50~14:00)へお礼参りでした。ところが、江若バスは15:46発により2時間弱のバス待ちの方に間を持て余しました。(笑)

八幡鳥居様式の地主神社鳥居 三間社春日造りの本殿

なお、比良山系の1000峰は15座の峰々で次のようなピークです。また、三角点は4座のみしか埋まってないと思います。

武奈ケ岳  1214.4m  3等三角点  200名山   コヤマノ岳  1181m 
蓬莱山  1174.3m  1等三角点 300名山      シャクシコバノ頭  1121m 
打見山 1103m          小女峠北のピーク  1101m 
釣瓶岳 1098m 御殿山  1097m 
  森山岳 1080m          烏谷山  1076.8m  3等三角点 
釈迦岳  1060.6m  3等三角点      堂満岳  1057m  
比良岳  1051m        白滝山  1022m   
摺鉢山  1006m              

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