京都西山 紅葉の西山古道 '12.11.27

 今年の紅葉は例年よりやや早めであったためか見ごろの時期を逸してしまったようです。とはいえ、それでもなんとか間に合ったのかな?というくらいの紅葉狩りで、遠方からせっかくお越しいただいた皆様には誠に申し訳なかった次第です。
 それに西山古道一帯の紅葉もさらに早く見ごろが過ぎていたような気がしました。自然相手の時期設定はなかなか容易ではありません。でも山歩きのこちらは紅葉はさることながら、軽いハイクでお楽しみいただけたものと思います。
 また、道中では「NPO京おとくに・街おこしネットワーク」のメンバーの方々が道直しをしていただいている姿を拝見し、きれいに修理清掃なったばかりの登山道を歩かせてもらい、山歩きする立場から頭の下がる思いで歩かせていただけたのもよい思い出となったことでしょう。

 取りつきの西国三十三ケ所霊場第20番札所でもある善峰寺を11時ころスタートでしたが、こちらの紅葉も車道沿いの紅葉がほぼ終わっていたような雰囲気でした。歩き始めてすぐの展望台から見る善峰寺一帯は遠目ならどうにか見られたかなとの感じでしたでしょうか。

 5月頃開花のクリンソウの群生地や9月頃にはアケボノソウも沢山咲きますとの箇所すぐ上の京青の森でお昼としましたが、この日は北風の強い一日でもあって、すぐに寒くなってしまいゆっくり食事もできなかったですね。広い道を歩き出してすぐあたりにはアカネ科のツルアリドオシが咲く場所です、などと話しながら前進です。
 そしてゴルフ場手前までやってくると下り道が手直しされているのがすぐに分かりましたね。そうです、この日はNPOのメンバーの方々が手分けして、あちこちのコースの中の痛んだ箇所を修理したり、落葉が積もった階段などを清掃されている作業に出会いました。

 乙訓の展望台で丁度手直し作業中の方達に追いつきました。みなさんでメンバーの方々へお礼を言って一休みさせていただきました。展望台から関電の電線が邪魔ではありましたが、正面には都富士の比叡山がよく見えていました。私は写真撮るのも忘れて左から水井山、横高山に比叡山、そして暗部に小さく尖るのは近江富士の三上山、それから右に音羽山に千頭岳などと山座同定させていただきました。参考に今春の画像↓を貼ってみます。

これは今春5/14の写真・・

 この後も、小雨が降ったり止んだりと目まぐるしい一日で、それに寒さも堪えました。右手にゴルフ場のクラブハウスが見えるあたりの足元にはシダ植物のウラジロ科のウラジロやコシダが大群落でしたね。
 その後の下りあたりには珍しいハイノキ科のクロバイという樹木も説明させていただきました。いつかびっしり白い花を蜜につける5月頃に見てみたいものです。ところがこの木は毎年は咲かず、数年に一度しか咲かない希少な樹木なんです。今後もし咲いているのに出会えたらきっと写真を撮ってUpしますから、4下から5上の頃にもこのHPを毎年覗いて見てくださいね・・・・笑

 いったん谷へ相当な下り道を降りて、足元の少々よくない道を登っていくと、目の前が明るくなって鹿よけの金網が張り巡らしてありました。予定ではこの金網のドアを出て柳谷観音さんの紅葉見物も考えていたのですが、当初予定時刻より相当遅れていたために、残念ながらパスして先へ進みました。よろしければ観音さんの紅葉を含めて、昨秋の西山古道歩きの様子のものですが、こちらからご覧ください。

 この後は少しの尾根歩きから下って谷筋歩きとなりました。この日も前日の雨あがりの日でしたから、数ある丸木の橋がよく滑り、歩きにくかったですね。そしてなんといってもメインは「十人橋」笑、これは高度もあってほんとに見るからに滑りやすそうな感じでヒヤヒヤものでした。これもサポートに追われて写真も撮れませんでしたので、4年前の12/12で少し古いですが、こちらからご覧ください。

 こうしてなんとか全員無事に渡っていただいた後に一本立て、そして次は鉄の橋を渡ると立石橋、そこでこの後も緩やかな上りの林道を行き、終点からはややきつい急坂道を登ることとなりますと説明し、西山キャンプ場を過ぎて野山への急坂には堪えた方もあったようですが、林道後半あたりの上を見上げてここにはバラ科のザイフリボクという、白くておもしろいお花を4月下旬に咲かせてくれるのですよなどと疲れを紛らわします。でもみなさんお疲れのようでしたが、なんとか登りあげて野山のピ-クでまたまた休憩を取ります。
 ここで、今回の目的でもある、紅葉狩りに関する話をさせていただきました。紅葉はどうしておきるのでしょうか?、その仕組みはこうなんですよとひととおり説明させていただきましたが・・・、いずれにしても次のようなメカニズムとなっています。

  

『紅葉のメカニズム』

 あの美しい紅葉は実は樹木の生態保護システム、つまり木々が自分の生命を守るための知恵の一部なのです。紅葉するのは落葉樹ですが、その名のごとく毎年秋から冬にかけて葉を全部落として丸坊主になります。

 植物というのは常に気孔から水分を蒸散させて、体内の水分量を調節しているのです。雨量の多い時期には余分な水分はどんどん蒸散させればいいのですが、冬期になって水分量が少なくなってくると、葉からの蒸散は逆に木に必要な水分量まで減らしてしまいます。水分は植物にとって命綱ですから必要な水分量が不足すれば大ピンチです。

 そこで水の少ない季節は蒸散を防ぐために葉を落として身を守るわけで、この落葉に至る一過程として、紅葉、黄葉という現象が起きるのです。つまり紅葉、黄葉は落葉の準備段階すなわちプロセスということができます。さてその紅葉の具体的なメカニズムについてふれてみましょう。

 前述のように秋から冬にかけて気温の低下とともに、葉柄の基部の部分に離層というコルク層が形成されます。すると葉と茎の間で水や養分の流れが悪くなり「光合成により作られた糖分が葉に蓄積されて、これからアントシアンという赤い色素を形成します。そしてクロロフィルという葉緑素が分解されて緑の色素が減少する」と紅葉になる図式です。

 これらの過程でいろいろな紅葉になる一方で、今まで目立たなかった黄色のカロチノイドという色素が目立って現れてきて黄葉となります。植物の種類や土壌、日照などにより、これらの過程には個性があり、赤、黄、まれに橙、紫色というように様々な色合いの葉となります。

 このように私たちを楽しませてくれる紅葉は、実は植物の保身術の副産物で、理屈が分かってみると一枚の落ち葉もワァー可愛い、きれいだねと感じていとおしくなりますね。

 


 さぁ、ゴールの光明寺さんまでもう少しですから、ちょっと歩くスピードを上げますねとお断りして、どんどん降って尾根から竹藪を縫うように歩くと池がありました。あれは潅漑用の法生池というのですが、その横の緑の金網そばを抜け、お墓が見えるとゴールの光明寺さんでした。(15:35)

 駐車場に待つバスへ荷物を預けトイレですが、これが観光客が多すぎて時間がかかります。ようやくみなさんで西山浄土宗総本山光明寺の見物(15:50~16:30)となりました。さて、つたない解説で光明寺のご案内です。あたりの紅葉がとてもきれいで華やかな雰囲気を醸し出しています。
 なお、今は「紅葉の特別入山」中で、今年は11/17~12/9までとなっていまして、それ以外の期間はフリーでお参りできます。

 まず、お寺の縁起について法然上人、熊谷次郎直実などにからむ歴史解説、高麗門様式の正門、白い五本線の定規筋、なだらかな女人坂の謂われ、嘘をつくと舌を抜かれるとよく脅された閻魔さんですが、実は菩薩様の化身であって私たちを極楽の世界へ導こうとなさっているのだそうです、などと閻魔堂の前でお話ししました。

 そして女人坂を上がりましょう。左には三重県出身の昭和初期の歌人である「塩田紅果」の句碑「うつし世の 楽土静けし 花に鳥」を読み上げ、光明寺あたりの景色のさまを読んだのでしょうか。今もその景色は変わらないように思いますねと感想を述べます。
 続いて右側の観音堂には千手観音菩薩が祀られていますが、光明寺のものは重要文化財に指定されてから京都国立博物館に寄託されており、その代わりに近くの子守勝手神社で祀られていた千手観音を預っているとのことです。
 左側の法然上人立教開宗の像ですが、生誕850年を記念し、昭和57年建立されました。時に43歳、鎌倉時代なら初老といってよい歳ですが、この像は全身に力がみなぎっているように見えます。この像の高さは阿弥陀様の四十八願にちなみ4.8mあるそうです。台座、像とも各2.4mで、これも西方浄土の西にちなんでいるようです。

 右側の勧化所(かんげしょ)は仏様の教えを説き、信心を勧めるとの意、今は毎月第一土曜日朝7時からお説教の会が催ようされています。
 また右側にある石棺は「圓光大師御石棺」の石柱が立ち、囲いの中には大きな丸っぽい蓋の石棺が置かれています。これは法然上人が亡くなって500年後、東山天皇から贈られた称号の大師であります。
 上人は1212年80歳で入滅され、東山大谷に埋葬されましたが、念仏の教えを快く思わない比叡山の僧侶たちが上人の墳墓をあばくとの企みが発覚し、弟子たちは遺骸を守っていたところ、石棺から一筋の不思議な光が放たれ、この光を追って南へ向かうと粟生に熊谷次郎直実が建立した念仏三昧寺にたどり着いたのが、現在の光明寺の謂われのようです。
 そして普通本堂といわれるのですが、こちらでは御影堂(みえどう)といっています。この建物などは応仁の乱をはじめとした兵火にあって何度も消失し、現在のものは1754年完成のもののようです。
 建築様式は入母屋、総ケヤキ造りで、建物の外側には江戸時代の職人の優れた技を感じさせる様々な飾り彫刻が施されています。右手の松は大正7年4月昭和天皇が皇太子時代の行啓時に、お手植えのものであります。
 中に入ると正面にご本尊である「法然上人御自作の張子の御影」が祀られています。その周辺は宮殿(ぐうでん)といい、美しく飾られており、これは極楽の荘厳な様子を現すように見立てられているからです。

 敷地18000坪の中にその他いろいろな建物があるのですが、ご案内はこれくらいにして皆様お目当ての「もみじ坂」の薬医門あたりの紅葉を見物しましょう。その前にお土産コーナーを冷かしてみませんか。おっ、これは美味しい!、、せっかく遠路はるばる京都までやって来られたのですからお土産を・・

 さぁ、紅葉です。う~んなんとみごとな紅葉でしょうか。一番盛りの見ごろといえるでしょう。きょうは平日でこの人出、土日なら大変な込み合い具合でしょうかね。それにしても見事な紅葉ですね。楓の寿命はそう長くはないのですが、この境内に植栽されている樹齢は長いものでは150年を超えるとのことであります。
 このようにきれいな紅葉ですが、紅葉そのメカニズムを知った上でのそのきれいな葉っぱたちを見つめると見る目も、自らの心にもゆったりとした満足感が味わえることとなることでしょう。どうぞゆっくりとご堪能くださいませ。

 
 

 それにしても光明寺さんの紅葉は素敵でした。多くの観光客が押し寄せるの当然のようで分かるような気がします。今回はお天気がそうすぐれはしなかったのですが、なんとか最後にすばらしい紅葉が見られてよかったですね。

 さて、ことしもたくさんのご参加ありがとうございました。すぐに寒さ厳しい冬の到来となります。でも山歩きはこれで春までおいておこうではなく、定期的に歩いていないと体力的にはまずいと思います。寒いといっても少なくとも月に1~2度は山歩きを続けましょう。
 そして来年には私、田中明お薦めの6月花の利尻山と礼文島へ、そして7月には南アルプス悪沢岳から赤石岳への花々の旅、さらに8月お盆すぎの鳳凰三山へタカネビランジ、ホウオウシャジンなどこれまた花の山旅、どれか今からご検討いただき、ぜひどちらかでお会いしましょう。お待ちしています。お問い合わせはこちらからどうぞ

 本日はお疲れ様でした。                                           ホームヘ