北ア 秋彩の氷河公園 '12.10.10~12

 紅葉の氷河地形の代表カール、それに天狗池の逆さ槍を狙っての秋山である。もっとも逆さ槍は間一髪天候に恵まれず、槍の頭は天狗池を辞してからのお出ましとなってしまった。ま、しかし紅葉にも氷河地形のモレーン上の紅葉にも満足させてもらうことができ、それに平日の山旅で山小屋も空いており、登山道も静かな歩きだったのだからよしとしよう。

     
 ウラジロナナカマドの大紅葉と槍ヶ岳   天狗池には逆さ槍顔出さず・・ 

 まずは山を取り巻く雄大な自然のすばらしさについて整理してみよう。高山では地球が極めて寒冷地化していた頃よりできた地形などが、低山帯には見られない氷河地形、周氷河地形などとして見られる。それらの地形が今回訪れた北アルプス槍ヶ岳下方の氷河公園と名付けられた一帯で見ることができるのだ。

 その代表的な氷河地形としては・カール(圏谷)、・モレーン(堆石丘)、・羊背岩が主なものだろうか。

@ カール
 5〜6万年前の最終氷河期にできたと思われる氷河地形の代表であり、氷河が流れくだらずに斜面の途中で止まった場合にでき、山肌がスプーンカットされたような地形だ。この地形は勾配が緩く底が平なカール底と、それらを取り巻く急勾配のカール壁からなる。(画像クリックで拡大)

槍沢カールのモレーン 天狗原カールと紅葉

A モレーン
 氷河が終わる地点ででき、大岩石や砂礫で造られる丘で、三日月型か舌状の小丘を作る。

B 羊背岩
 カール底に見られ、氷河に削られ上面が丸くなって、羊の背中のような姿をした岩石が転がっている。もっとも岩石上に植物が繁茂している場合がある。

天狗池上の羊背岩

 さらに高山の風衝砂礫地で、岩石に浸み込んだ水が凍結した後で膨張作用により岩が砕かれて凍結破壊作用となる。さらに土中の水の凍結と融解により、徐々に移動(ソリフラクション作用)して、長い年月の間にできた周氷河地形もあるのだ。それらには構造土、岩塊流が代表的といわれる。

@ 構造度

 ソリフラクション作用により少しずつ移動する礫や砂が、粒の大きさごとに集まってできた地面の模様で、亀甲形、縞状、舌状、階段状、土まんじゅう形など、さまざまなタイプがあるようだが、主たる構造土についてふれてみよう。
・ 亀甲土は極なだらかな斜面や火口湖で大きな石が円形か多角形に砂礫が亀甲状にふるい分けられて並び多角形土ともいう。大雪山ヒサゴ沼、御嶽山一ノ池、草津白根山鏡池、北八ケ岳亀甲池などが代表的
・ 条線土は安山岩質の火山灰を多く交えた火山斜面は火山礫と泥がふるい分けを受けて、10〜20cm間隔の縦方向の縞々模様ができることがある。代表的なのは乗鞍岳、御嶽山である。また、流紋岩からなる高山では白馬岳がその代表であるようだ。
・ 階状土は花崗岩質の岩石からなる高山では階段状構造土が発達しやすいといわれている。北アの鉢ケ岳、中アの木曽駒ヶ岳に典型的なものが見られ、ふるい分けによってできた階段が何十段も続くといわれる。

槍沢カールの条線土

A 岩塊流

 岩塊斜面ともいい、その成因は火山の溶岩が冷えるときにできたものと、氷期の寒冷気候下に凍結破砕作用によって形成された周氷河性のものの両方があるといわれる。すなわち氷期に凍結破砕作用で生産された岩屑が斜面下方へ移動し、後に細粒が流水によって除去されたために生じた地形とされる。
 、北アの黒部五郎岳、野口五郎岳や南アの仙水峠付近、白鳳峠下などでもこの岩塊斜面が見られるなどこの地形は珍しくない。また別件の山の自然のメカニズムに関する話であるが、縞枯れ現象の不思議の点でもその地形基部にはこの岩塊斜面の共通性が述べられているもの知っておきたい。

氷河公園の岩塊流と紅葉

 今回の宿は槍沢ロッヂと横尾山荘であったが、さすがに小屋あたりの紅葉はまだ早く、横尾つり橋たもとのカツラの木も3部程度でしかなく、途中の徳沢キャンプ場のマユミの木は今一つの様子となっていた。そして梓川からの明神岳、前穂高岳などを見上げながら、上高地を後にしたのであった。(画像クリックで拡大)

横尾のカツラ 徳沢のマユミ

 *文中の説明には「岩波新書の山の自然学」「東海財団の中部の山々」などを参照させていただきました。

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