湖西 比良全山縦走 '12.9.27~28

 今年も比良山系の全山縦走へ向かった。それにつけても全山縦走という響きはなんと美しいのだろうか。4度目ともなるがゆえの言葉ではなかろうか。最近の京都バスは平日運行はなさないことから、発時刻の遅さが気にいらないのだが、やむなく堅田駅からの江若バス利用である。

 平日のために登山道はほとんど目立たなく、幕営地にあっては人影など皆無で逆に気味悪いほどである。初日は9:25から歩き初めて、八雲ケ原幕営地15:20着で6時間、2日目はテン場6:07発でJR高島駅15:20着の約9時間の合計15時間の歩行であった。

 さて、それではその様子を綴ってみよう。

 バスは自由乗降のため平バス停手前の登山口入口あたりで下車し、ドン谷の登山口だがあたりは伐採中で少しばかり手前に登山道の迂回路が付けられていた。すぐに本来の道に合流してアラキ峠、今日は暑いくらいで雨は心配ないが、水の用意が気にかかる。(以下全画像クリック拡大へ)

ドン谷9:33 アラキ峠10:00

 アラキ峠から一直線に権現山まで直登である。もちろんいつもながら一人旅である。全山縦走で一番の天気のようだ。南西には愛宕さんもきれいに顔を見せているのがうれしい。

権現山10:30 権現山から愛宕山

 これより比良山系の稜線漫歩が続いてくれる。それに頬うつ微風が心地よい。途中の祠に頭を垂れて2日間の無事をお祈りしよう。なだらかな笹原の小道のスカイラインコースだが、背の荷がまだ身体に馴染まない。もちろんもう大汗しきりでもある。

 しかし、このあたりで気がついた。いくら進んでもこの時期なら樹木にいろいろな実がついているはずなのに全く姿はないのだ。ムシカリに始まってガマズミ、カマツカ、アオハダなどがあるのだがひとつもない。今年は実なりの不作の年回りなのだろうか?、ひょっとすると熊騒動がまた起きないだろうかと心配しながら歩くこととなってしまった。

 そうこうしているうちに小ピークのホッケ山だ。ここから先の蓬莱山の眺めも心弾む瞬間である。もちろん眼下の琵琶湖の景色もいい眺めだ。2日間ともこの琵琶湖が見られるのもうれしい。そして次は小女郎峠までの間には日差しの中にリンドウがそれなりに咲いて、花に出会えば元気が出るなと思わず微笑みながらの歩行である。でも、いつもならこの時期アキノキリンソウ、ニガナももっと咲いているはずだが、山野草も淋しい。しかし、峠に着けばキタヤマブシの超満開にやった〜と万歳気分で、この先もしっかり歩けそう・・。

ホッケ山10:55 蓬莱山を見る。 リンドウ咲く キタヤマブシ

 峠よりわずかな登りであるが、次は蓬莱山の唯一の1等三角点地である。もちろん何度見たのか数えきれないここからの武奈とコヤマノ岳の展望である。さらに今回は右の釈迦ケ岳も目が行くのは当たり前だ。草原は鹿の落し物だらけで匂いもするが、座る場所を探すのも一苦労だ。そんなこと言ってられないが、糞の乾いた場所を探して昼食としよう。比良の雄を眺めながらの食事も美味い。


蓬莱山11:40昼食、奥は武奈ケ岳とコヤマノ岳

 まばらな観光客しかいない打見山へのピークは避けて、笹平から汁谷へのショートカット道を進み、3年前まではキャンプ場で水道設備も生きていた地だが、今はストップしている箇所を通過して木戸峠へ上がり、この時期ほとんど涸れている水場地を通過して、いよいよこの後は二つの登りが待っている。
 はじめは比良岳の軽い登り、看板地は樹林の中で手前には古木のブナの木がすばらしい。それにわずか先の大岩あたりは眼下の琵琶湖と先の烏谷山の展望も楽しめる所である。

古木のブナ 比良岳12:55 大岩地 眼下の琵琶湖

 さぁ、葛川越のコルまで来ると次の登りだ。これがいつも苦労する烏谷山への急登であるが、今日は久しぶりのお天気で、途中にある小さな地蔵さんの立つガレ地からの展望が楽しみだなと思いながらアヘアヘだが、待っていました!。その蓬莱山などの景色を振り返り見るのである。十分堪能してすぐに烏谷山山頂だった。ここも眺めは悪くない。
 一休みとしよう。ツマグロヒョウモンもわが身にまとわりつきながら三角点に羽を休めてくれた。でも降り口にあるクロソヨゴにもいつもの赤い実は皆無であるのが淋しい。

最奥に蓬莱山 ツマグロヒョウモン 烏谷山13:30 堂満の上に釈迦

 この先の急な下りを慎重にやって荒川峠からまた登っていくが、このあたり南比良峠、さらに堂満岳分岐までの一帯がにわかに道は細くなって、谷側は切れ落ちる箇所に注意しながら進んで、右へ堂満岳の指導標(14:33)を見るとどうしても一安心で一本立てたくなる。

 この後すぐで金糞峠(14:50)、そして峠下のいつも赤いひと張りだけあるテントサイトを通過(14:53)し、我が今晩の宿である八雲ケ原へ向おう。そして着きました(15:20)。八雲の幕営地だ。まずは八雲ケ原湿原を散策としよう。しかし、期待していたよりずっと寂しい湿地帯であった。せいぜいウメバチソウ、アブラガヤくらいしか咲いていない。

八雲ケ原 湿原は 今では植物たちは 少なくなっている。

 散歩を終えると、今回のもうひとつの楽しみでもあった十五夜の一足早いお月見だ。明るいうちにそのできそうな場所を見ておこうと、湿原とは反対側の昔のスキー場側へ移動である。う〜ん、いい具合にススキも整っている。よしこれで今晩の星空観察も楽しめることだろう。

 次はテントの設営だ。となかなか休むこともできない。なんとか幕営が完了してからが大変である。夕食だ、さらにこの地はそう水場に元気がない。仕方ないがどうにか確保して用意しよう。こうして夕食を終えて一休みしようとテントで横になるも、すぐに眠ってしまうこととなるが、7時すぎに気がつき空をながめるも真っ白状態。なんだ、この空は、、、あれだけよい天気だったのに夜はこれかよ〜と泣きたくなってしまう。暗くなった空間には鹿のピ〜という声だけが響き渡る。しょうがない、楽しみにしていた星座観察と中秋の名月はダメかよう・・もう寝よう!

 ところが深夜にテント内が明るいではあ〜りませんか?・・・お、これはとすぐさま外に出て見ると、なんとまん丸いこれぞ中秋の名月ではないか。でも、でも。深夜の0時、誰もいない高い山の中のあまりにも深閑として樹林に囲まれる草原の原っぱまで出かけて星空観察とまではさすが、勇気が出ずにテントのそばから丸いお月さんを眺めるのが精いっぱいであった。

 しばしのお月見を終えるとテントに潜り込んで静かな時とし、5時のアラームにて二日目の始動である。今日はこの後、不要物をテントにデポして最小限の荷で、コヤマノ岳方向へのコースから武奈を踏んでこよう、そして北陵尾根から細川越、広谷からイブルキのコバよりテントへ戻って撤収後に釈迦へ向おうとの予定だ。

テン場発6:07 コヤマノ岳手前 武奈ケ岳6:55 

 予定どうりの行動で、細川越手前のコハクウンボクであるが、今年は結局花時の6月ころには来れなかったことから、この木の開花は未見となってしまった。いつか開花に出会いたいものであるが・・・、さて、この後にオオバアサガラの葉にも目に止まった。この種は谷合の水の流れに沿って見ているが、このような乾いた稜線においても分布するとは初めて気がついた。そして圧巻だったのは、何と言ってもスゲ原のキタヤマブシの大群落の満開時に出会うことができた幸せであった。

キタヤマブシ 大群落のキタヤマブシ

 この後、広谷の今にも折れそうな朽ちかけた橋を渡って、イブルキのコバへ上がってからテン場へ戻って撤収(8:10~30)、釈迦ケ岳からリトル比良方面に向かうこととした。だが、この後のわずかな登りのはずが、どうしたことか足が重いのだ。それでもじっくりと歩いて釈迦には9:10到着だった。この間は何度も歩き慣れた道のために気持ちの変化はまったくなく無感動である。

 しかし、釈迦ケ岳より北側は過去の歩く回数は極端に少なくなる。そうはいってもとりわけフジハゲ付近の展望は気分上々であろう。山側に、琵琶湖側にと展望が忙しい。展望ばかりでなく、本来の自分自身での楽しみの花時も、このコースへもぜひ足しげく狙ってみたいものであるが・・。

フジハゲより こんな眺めを 楽しみながら 歩るく

 でも、この間の釈迦からフジハゲそしてヤケオ山への登りも急登で苦しめられたのだが、結局はフジハゲ一帯からの展望に助けられた歩きであった。この逆歩きはほんとうに辛いものがあるのは今年の夏7/17に歩いているために覚えていたのだが・・そしてやっとのことでヤケオ山山頂(9:43)だが、ここでも眺望を楽しもうと休みの言い訳とする。

ヤケオ山9:43 山頂から 眺め

 そして次のヤケ山直前にもうれしい出会いがあったのだ。それはシコクママコナのこれまた大群落であった。登山道沿いに30mは十分あっただろうか。もちろんヤケ山山頂にまで群落で、山頂は日が直接当たるためだろうか。ママコナの葉っぱは完全に草紅葉化し、のきなみ赤褐色となっていた。

シコクママコナ ヤケ山10:25 山頂から武奈も

 この後はやや下って面白い姿のブナを見てすぐに寒風峠に10:45~11:10で昼食としよう。済ませて腰をあげようとしたところ、偶然にもオトシ方面から3人到着し、ほぼ同時に若い単独者が珍しく西の寒風橋方面より上がって来た。
 オトシは何度も歩いているが、西側は未道であるので早速その道情報を聞くとやはり相当荒れているようで、途中では分からなくなってしまい、コンパスで確認しながら適当に歩いてやってきたとの答えであった。やっぱり、地図は実線であるが、不明瞭な道に違いなさそうとの情報を得て、今後探索はまず下りで使ってみようと考えながら礼を言ってリトル比良へスタートとした。

 リトル比良コースは勝手知ったる道のために、そう期待もしていない。そんなことから気分的にも足元の苦しさばかり気になる始末であった。鵜川越の林道まで寒風峠より40程で歩き、いよいよ岩阿沙利の登りにかかった。
 しかし、これが思わぬ辛さとなってしまった。さすがに朝からすでに6時間は十分歩いている。それに背も軽くなったとはいえまだまだ重くて苦しい。それでも林道から18分で山頂だ。さすがにへとへとで12分もミドル休憩となってしまった。

 そしてこの後も、大岩があちこち座っており、小さなピークが続いてアッパーブローは次第に足にまできた。でももう少しだと自らに言い聞かせるわが身が惨めだ。そうしてなんとか鳥越峰出会いまで来て、よしオーム岩まで後わずかだと言い聞かせて頑張れと叫びたい気持ちとなったのである。
 出会いから5分で待望のオーム岩着だ。ここからの大展望を岩上から10分も眺めながら、我何思うの気持ちであった。しかし、琵琶湖の上に伊吹山、そして余呉方面の横山岳、高島の乗鞍岳などの高島トレイルの面々、それにもちろん奥比良のピークたちを眺め回して気分爽快にして足の重いのもすっかり忘れるほどであった。

オーム岩 からの 眺め

 ゴールまでは後はわずかになった。だが、道は次第に歩きにくくなるのが足裏に極めて堪える。岩のかたまり岳山、岳観音堂跡、そして白坂に極め付きの歩きにくいハゲ坂から、なんとかようやくで賽の河原に下って清水で顔を洗い、気分を入れ替えてから最後の林道をくだって大炊神社へゴールであった。もちろんJR高島駅まで後20分の舗道歩きが最終ゴールインだった。

岳山13:45 白坂14:15 賽の河原14:30 大炊神社14:50

 これでなんとか無事に比良山系のYの字縦走も成し遂げることができた。しかし、ほんとうのところは体力的に限度であったことに違いない。でもこれでは今後の夏山などに通用できる身体とは決していえないだろう。まだまだボッカ訓練等のトレイニングが必要不可欠のようだ。反省、、、

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