安倍奥  山伏から八紘嶺縦走   '12.6.4~5 前夜発、避難小屋一泊、夜行帰り ( 二日目)

  

初日 西日影沢登山口-蓬峠-稜線分岐-市営避難小屋-山伏-大笹峠-岩ノゲート-T峰-小河内山(U峰)-V峰-以下山伏~小屋まで戻る(泊) 
二日目 小屋-山伏-新窪乗越-巻道-大谷嶺-五色ノ頭-八紘嶺-富士見台-分岐-新安倍峠-林道-登山道入口-登山口(梅ケ島温泉) 

 初日は山伏から白根南陵の小河内山をピストン縦走してすっかり疲れ切りましたが予定どおり小屋泊まり、開けて二日目は大谷嶺より八紘嶺を踏んで安倍峠まで進み、谷筋の美しい道を梅ケ島温泉へ下る予定ですが、さてどうなりますやら・・・

 それにしても昨夜は以前のネットで見ていた小屋内のネズミ騒動もまったくなく、その点では食糧などを完全密閉してザックにしまうなどやや神経質的な対策を済ませて眠っていましたが、思わぬ静かな夜で安心というより逆に静かすぎて浅い眠りの一夜で朝を迎えてしまいました。
 そして朝が白んでくると4時すぎにはコマドリの賑やかな声でもう目が覚めてしまいました。アラームは5時のセットでしたが、ちょっと早いが起きようかなと小屋外に出てまずは大きく深呼吸です。小鳥のさえずりの中に新緑が目にも耳にもやさしく、ここへ無理して運び入れた我が体に感謝しながら朝の二日目が始まります。そしてすぐに朝食を取った後は行動開始(5:35)としましょう。

 夜来の雨も上がって、予定どおりの縦走ができそうです。さぁ、山頂からの富士が待ってくれているのでしょうか。と半信半疑の期待で山伏頂上へ急ぎ足で到着(5:55~6:05)でした。やった!〜、富士山が丸見えではありませんか。久しぶりの富士見山行です。


東方向をズーム 

 
            光岳                 茶臼岳        上河内岳     聖岳         赤石岳        荒川岳       布引山 笊ケ岳     間ノ岳 北岳   

  青空とまではいかなかったのですが贅沢はいえません。これだけの展望ならよしとしましょう。さぁ、いよいよ縦走にはいりましょう。もっとも今日の尾根どおしでは水場はまったくありません。3.8gかつげばやっぱり堪えます。そうそう、歩き出すとすぐにペースが速くなりかねません。しかしながら本日は夜行バスの時間に間に合うように歩けばいいのですから、のんびり超ゆっくり歩きとします。
 そして初コースで目のまわりはすべてが興味深々です。この時期関西の低山ばかり歩いている身にとって、標高の高さから当然でしょうが、新緑はまだまだ清々しく我が近場の山の景色とはずいぶん違います。
 コメツガ、シラビソなどの針葉樹林帯、ダケカンバの森など亜高山帯の空気も美味しく感じたり、さらにはブナやカエデの林立などに雑木林も広がっての新緑がどこまでも続いています。まさに安倍奥での大森林浴そのものです。

 そしてそろそろ大谷嶺手前の新窪乗越も近いのではと思うようになってくると咲いていました。聞いていた巻き道はまだなのにもうヤマイワカガミの大群落の連続でした。昨日は花数がやや寂しかったのですが、それでも初見花ということでそれなりの感動を得られたのは事実です。しかし、今日の咲き具合はきのうとは話にならないくらい驚愕の極みでありました。

 ヤマイワカガミの特徴は鋸歯が強く、花冠は白色です。イワカガミの白花には他にヒメイワカガミがあり、こちらは鋸歯が1~2対と極端に少ないので、ヤマイワカガミとは葉の鋸歯が違いますからすぐに見分けがつきます。。

 ヤマイワカガミの群生も大満足でしたが、こちらの稜線には満開のムシカリがずっと咲いています。もちろんトウゴクミツバツツジやシロヤシオはほとんど終盤となっていますが、標高が下がってくるとまだまだ満開の個体も多数見られました。

 それより嬉しかったのは、八ケ岳ではよく見ていたイワセントウソウにも多数出会えたことでした。久方の再会でしたが、しっかり観察もできました。

イワセントウソウの茎葉が
鹿の角のように見えて面白い
根生葉

 そしてコヨウラクツツジも久しぶりに見れました。新窪乗越(7:33~43)ではここが大谷崩れの乗越かと休憩をいれます。今度はこの乗越へ突き上げる扇の要から上がって、それこそ日本三大崩れのすごさを目の当たりにしたいななどと考えながらのひと時でした。
 しかし、今日はヤマイワカガミがお目当てです。きのう登山口まで送ってくれた友人からの巻き道のヤマイワカガミがお勧めですとのことでしたから、いよいよその巻き道へ向かいましょう。すると言葉どおりやっぱり見事なお花のすごさに大満足でした。

 そして大谷嶺への本線に合流して下方を覗きますとすごい崩れにもびっくりしながら、山伏や小河内山を振り返って、あれを歩いてきたのかと感慨にふけります。するとすぐにその山頂、2000年の山としてその年には多数の登山者で賑わったとの大谷嶺到着(8:42^9:12)で、ここでも大展望を楽しみながらゆったりと大休止とします。
 この山頂標高が1999.7mということで2000年の年には山梨県側の地元のイベント開催で登山者が大賑わいだったとのことです。そうだ、ならば2013.7mの山伏(ヤンブシ)には2年後の2014年に登ろうか、それとも2013年7月のヤナギランの満開の頃に登ろうかとひとりで楽しんでいるのでした。。笑

大谷崩れと八伏、小河内山 大谷崩の山頂 山頂より南アの眺め

 大谷嶺ではゆっくりしすぎるほど休んでしまいました。さぁ、次はいよいよ最後の八紘嶺です。まずは半時間ほど静かでカラマツ帯の気持ちのいい森を歩きます。そして五色ノ頭から下っていくと樹林の向こうにいよいよ八紘嶺の頭が見えてきました。

樹林の先には八紘嶺が シロヤシオもまだまだ咲いて トウゴクミツバツツジもいくらでも

 登りにかかる最後のコルのヤセた地一帯はキレットとなっており、フイックスも設置されてやや体力と技術も要しますが、わずかな地帯ですからそれほどのことはないでしょう。しかし、そうはいってもここまで相当体力を消耗していますので休み休み前進とします。

途中から七面山が頭を見せ ヤマイワカガミもこの辺でend

 今日はバス時刻の関係で時間はいくらでもあり、その点では支障はありませんでした。でも普通どおりに歩くとすればやはりこの登りは相当な体力勝負となりそうです。といってもコース内ではここだけですからそう心配な山ではないと思いますが・・・。

 こうして大谷嶺よりたっぷり1時間半も時間をかけて八紘嶺到着(10:45~11:30)です。もっとも大分前からあたりには雲が出だして展望はむずかしくなってきています。この山頂は特に尖って狭く、三角点や小さな岩があることから平坦地は少なく、まして冷たい風があたります。以前ネットで見ていたこの山頂でテントを張ったとありましたが、う〜んちょっと狭くてきついのでは?などとチエックも怠りません。

八紘嶺山頂

 そんなことから風を避けて七面山縦走路方向への一段下がった箇所でガスに火をつけ昼食とします。ここまでくればもう終わったも同然ですから、食糧は行動食をわずかに残してほぼ消費しましょう。食べ物をしっかりおさめてさらに休憩です。
 でもこの山頂はほとんど展望なく、寒さを感じるほど風もあって何もすることがありません。本でも読もうかなと出したり入れたりで時間だけはすぎていきます。そうこうして十分すぎる休みで腰をあげます。でもこの後、富士見台(標識など皆無)までの急坂には想定外でした。

 途中には山野草はほとんどなかったのですが、それでもワチガイソウが咲いていたのを見つけて写真です。このお花は茎が細長く、わずかな風に揺られるために動きっぱなしでうまく撮らせてくれません。樹木花は相変わらず同じで下りるにしたがい、どんどん満開状態で見られます。それにニワトコまでがまだ咲いているではありませんか。昨日もヒコサンヒメシャラの木肌を見たのですが、登山道沿いに立ちうまくその葉もしっかり観察させてくれました。さらにカエデ類が多く出だしてきます。イタヤカエデ、ヤマモミジはもちろん、オオイタヤメイゲツの大木がどんどん出てきます。

ヒコサンヒメシャの花期は7月
ナツツバキ属内では一番遅い
ニワトコが6月なのに満開 ワチガイソウ オオイタヤメイゲツの古木 オオイタヤメイゲツの葉

 これらの植物たちを見ながら下りて行くのですが、結構足元に段差が大きかったり、ロープに助けられたり、ザレの急下りもあったりして一筋縄では下りれない道が続いています。こんな道は見るに値する植物たちがあったから、気を紛らわせながら下りられたのですが、何もなくただ下りるだけであればつまらない道ではないのでしょうか。
 それでもようやく1時間ほど下ると本来なら富士山の展望地だろうと思われる富士見台らしきところは今は真っ白で通過です。すぐに梅が島温泉と安倍峠の分岐に出ます。ここをさらに東へトラバース気味に歩き、また登ってようやく立派なトイレのある新安倍峠到着(13:07~25)でした。

 この周りにはオオイタヤメイゲツの古木の群落が珍しく、国有林として植物群落保護林の指定がされているようです。さて、我が計画ではこの後もさらに東の安倍峠まで車道を登って、今度はササ川へつながる谷筋を歩く予定となっているのですが、ここで悩みました。
 実はもうこれ以上登るのは、、それも車道歩きで・・・とのことで思案します。時間的には約1時間ほどですが、今日は歩き疲れました。もうこれ以上の歩きはカンニンして・・と下半身が申しています。笑

 ということでこれより車道を登山口入口まで下ります。でもこの車道両脇にも植物たちが楽しめます。あっ、ありました。ホソエカエデが、あ、ここにもあそこにもと、酷似するウリハダカエデは見当たらないのにホソエカエデばかりです。さらにアサノハカエデまであるではないですか。やっぱり関西の山ではありません。両者とも関西では見当たりません。この種も北岳の登山口で見て以来でした。

ホソエカエデ アサノハカエデ

 さらにはウツギ類のヤブウツギ、ヒメウツギなども開花が始まりそうなようすでした。ガードレールそばにはマムシグサも背を高くしています。谷あいにはミヤマハコベの大群生も見られました。20分ほど下ると本来歩いてくる予定の谷間の出口に「安倍峠旧歩道入口」と標識(13:41)が立っています。う〜んここに出てきたかったのになぁ・・・と思っても後の祭りでありました。

 さらに20分弱車道を歩くと八紘嶺登山道入口(13:58~14:03)で、これよりまた植林帯の山道を下りますが、この道も小石がたくさん転がっており疲れた足には堪えます。間伐展示林のこの道を50分近くもかけて梅ケ島温泉上の登山口(14:55~15:00)へ降りてきました。
 ここで温泉集落が見えホッと一息入れますが、ドコモのアンテナそばにはこれまた立派なホソエカエデが立っています。今回はお目当てのヤマイワカガミとホソエカエデを堪能でき、さらには山伏からの富士にも小躍りしたうれしい山旅となったのでした。

 もちろん、まだまだバス時刻まで時間たっぷりで、すぐ下のさつき苑で入浴休憩とさせていただき、薄暗くなった安倍奥の山並みを見やりながら、最終便の17:47でゆったり揺られて心地よい山物語を夢のなかとして静岡駅(19:28)へ向うのでした。

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