南紀   雲 雀 山    H18.1.7  曇りのち小雪

 金剛山植物観察会グループによるmasutaniさんを先生役とする特別観察会に参加して、はるばる小雪舞う南紀まで冬の旅を楽しんだ。珍しく白いものが何度も舞い散る冬景色の例年にない厳冬のお正月すぎである。

 思えば我が幼少の頃の日本海側地方ではこの程度の寒さは当たり前で育ってきたのだが、長年の暖冬の都会暮らしにより、これくらいの寒さに身を縮める情けなさにどのように感じればよいのかととまどうばかりである。

 さてこの寒さにより植物たちも異変を感じているのだろうか。これまでのほぼ同じ時季に観察にやってきた中ではもっとも見所の淋しい観察会だったのではなかろうか。それでも普段あまり目にしない、温暖な紀伊半島での植物たちを主体にリポートしてみよう。

  熊野古道の宮原の渡しの跡残る宮原橋から雲雀山も指呼の間である。有田川の河川敷下部に青々としているのはイネ科のダンチクだ。

 熊野古道の宮原といえば得生寺があまりにも有名だろう。心をこめて手入れされているお庭には南方らしく、寺院や神社に植栽の多いマキ科のナギが見られた。この種は葉にも樹皮にも特徴が見られる。また同じく植栽されているソテツが相当古くなっている。

 
ナギ(マキ科) 

  これまでならいつも咲いていたソシンロウバイは蕾が膨らみながら震えているようで開花もまだこれからだ。帰化植物のマメカミツレはまだまだ蕾固しである。

 暖地らしくイヌマキの垣根が目立ち、マサキも紅色のひょうきんな実をはぜている。庭先にはフウセントウワタやみかんも植えられている。古道を分けて山道を登り始めるとヤブラン、シュンラン、カラクサケマンたちやヤマモモ、カクレミノ、ヒメユズリハ、コウヤボウキ、ヤブニッケイの樹木が見られ、備長炭で知られるウバメガシがいっぱい出てくるとそこはちょっとしたガレの雲雀山頂上だ。

 眼下には宮原の街並みが手に取るように見渡せ、全員での写真が終わると糸我峠へ進みお昼となった。

 
ヤブチョロギ(シソ科) 

 道々にはモチツツジもわずかに咲き、ヤマウルシだろうか、いや果実の表面が無毛のようだからヤマハゼではないだろうか、白っぽい乾いた果実がたわわにぶら下がっていた。 

 みかん畑の続く糸我峠で腰をおろしたそばにはシソ科のヤブチョロギが例年になく淋しそうに開花を待っていた。

 みかん畑には摘果後のみかんが数多く放置されているものだが、なぜか今年はほとんど数も少なく、口に入れるものの味を堪能とまではいかなかった。

 イヌビワ、ゴンズイ、クサギ、カゴノキ、ノグルミ、カマツカ、ネズミモチ、フユザンショウ、ビワに遠目にタマミズキを眺め、さらにトキリマメ、タンキリマメ、クズ、テイカカズラ、サネカズラなどの果実も見られ、ツワブキは黄花を残してくれていた。

 
カラクサケマン(ケシ科) 

 湯浅湾を見下ろすみかん畑あたりにはケシ科の帰化植物であるカラクサケマンも沢山咲いていた。他にもツルソバ、ヤマアイなども咲いている。

 施無畏寺までやってくると珍しいハイノキ科のミミズバイが独特の果実をつけていたが、高木のため写真は難しい。枝に果実の並ぶ様子がミミズが頭を並べているように見えるためにミミズバイという名前のいわれだろうか。仲間であるクロバイの花をよく見ているが、こちらの開花時季である夏くらいには狙いを定めてみることにしよう。 ヤブコウジ科のカラタチバナは見慣れていても近縁種のタイミンタチバナは珍しいが、今回は果実、花芽ともに見当たらなかった。

 
ハマナデシコ(ナデシコ科) 

  栖原海岸沿いの山際の防護ネット越しにハマナデシコがわずかに咲き残っており、付近にはアゼトウナも痛々しげな残花があった。

  これらの満開時季であろう秋の頃にも訪れてみたいと何度も思っているばかりである。 

     
クスドイゲ     アコウ

 海岸べりの船が引き寄せられているあたりにくるとイイギリ科のクスドイゲ(↑画像左)、クワ科のアコウ(右)というこれぞ暖地性植物ともいえる樹木も元気であるが、これまた花や果実の機を逸しているようでもあった。

 長い海岸沿いの舗装道路をJR湯浅駅まで歩いてきのくにのローカル線にごとごと揺られながら、今度は12月や1月でなく時季のいいころに再訪を心に期して帰路についた。

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